5-4【助けないとね】
☆バーグラー
肩で激しく息をしながら、バーグラーとランサーは地面に座り込む。そして、先ほどであった少女のことを想起して、顔を見合わせる。
「あれ、本当にフェンサーのゾンビだったのかね」
「そうだと思います……信じたく、ありませんけど」
バーグラーはナイフを強く握る。冷たい感覚が体の中を走り、ぶるりと震える。こんなにこれは冷たかっただろうか。
フェンサー。彼女は死んだと思ったのに、生きていて、やっぱり死んでいた。こんな再開、全く望んでない。
ランサーはどうだろうか。彼女の方を見ると、彼女も空を見上げていた。どこか虚しい顔に見えるのは、仕方ないことなのかもしれない。
「……助けないとね」
「えっ」
消えていきそうなつぶやきを、バーグラーは聞いてしまった。しかしその言葉の真意は、聞かなくてもわかる。気持ちは一緒なのだから。
「とりあえず動きましょう。そしたら、何か変わるはず……です」
「そうだねぇ。あたい達は倒れるわけにはいかないからね」
そう言って二人は立ち上がる。二人でなら、なんだってできる。そんな気さえしてきた。
「そういえばランサーさんの願いってなんです?」
「あたい?あたいには特に願いはないね。そういうバーグラーはどうなんだい?」
「私ですか」
そう言ってバーグラーは目を閉じる。叶えたいと思う願いはバーグラーにも、そしておそらく他の参加者にもある。願いを叶えるために殺し合うのが、マジカル☆ロワイアルなのだ。
確かにバーグラーには叶えたい願いがあった。しかしフェンサー達の行動して、だんだんと感化されて行ったのだ。それに死んだらもう会えない。彼はまだ、生きている。
そしてふと気付く。ランサーはなんだ?彼女は本当に無欲に見える。笑いながら「この戦いが終わるってのが一番願いかな」と言っているが、それは本心なのだろう。
死にたくないと言っていた彼女。今では隠れる事はせず、前に前に進んでいく。彼女の精神の変わりようは、喜ぶべきところなのだろうか。
戦いを止めるために戦う無欲な少女。そんなランサーはまるで——
「どうしたんだい?早く行こうじゃないか!」
「……そうですね。いきましょう」
気持ちを切り替える。考えすぎなのだろうと、バーグラーは自分に言い聞かせた。とにかく今は動く事だ、と。
◇◇◇◇◇
☆テラー
気絶してからどれほど時間が経っただろうか。痛む頭を抑えつつ、起き上がろうとした。しかし、体は全く動かない。
身体中に何かが巻かれてる。よく見ると、それは縄であり、少し動くと体にギシギシと食い込んでいく。
「ここは……」
「あ、やっと目がさめたー!おはよ!」
無邪気な声に反応して顔を動かすと、そこにはコウモリパーカーを着た少女がいた。彼女はこちらを見てにこりと笑う。
「貴女は……」
もしかして助けてくれたのだろうか。そう思い声を出そうとしたが、当然腹の方に何か冷たいものが当たったような気がした。
それと同時に全身に走る痛み。生暖かいものなジワジワと腹を中心に広がっていく。ウプッと口から赤いものを出した瞬間、テラーは今何が起きてるかを理解した。理解したからこそ、大声で叫んだ。
「ああぁああぁああぁああああっ!!!!」
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
何故?どうして?体を貫いているコウモリパーカーの少女の杖を見ながら、テラーは自分に尋ねていく。答えは出るわけがない。
私は観客側なんだと、自分に何度も言い聞かせる。そう、私は支配する側なんだ。こんな事、あっていいわけがない。
「おやおやぉ?ようやくおめ——」
聞きたくない声が聞こえてくる。しかし、その声は、テラー自身の叫び声でかき消されていく。
助けろと言いたかった。なんでもいい、なんだってする。金も払う。なんなら、この体を好きに使ってもいい。だから助けろと。
声は全くでない。叫び続けてかすれていく喉。こんな惨めな姿、何故晒さなければならないのだ。
「た、す…………け…………」
「んー?ダメだよお嬢ちゃん……でもまぁ、少しだけ、優しくしてあげようかねぇ?」
そう言って近くにいた少女が、テラーの耳元に銃を近づけた。涙目になり、助けを求める。その顔を見て、少女はにこりと笑い、それにつられてテラーも笑う。
「もう一度、おやすみ」
バァン!!
耳の近くで響く音を聞き、テラーはプツリと自分の意識が遠くなっていくのがわかった。そして同時にわかった。
これは夢なんだ。私がこんな目に合うわけがないのだから、これは夢に違いない。薄れゆく意識の中、テラーはそう思い、ゆっくりと目を瞑った。
早く夢から覚めないと——
◇◇◇◇◇
【メールが届きました】
【テラーとキャスターが戦いました】
【結果、テラーは死にキャスターは生き残りました。キャスターには1ポイント。只今の合計は 4 ポイントです】
【残りの魔法少女は 8名です。頑張ってください】
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