4-11【見苦しいところを特等席で見せてくれてありがとうね】
☆アーチャー
銃声が止んだ。
ブレイカーと一緒に物陰に隠れている。彼女がいうには、セイバー以外とはあいたくないだそうで、確実にガンナーであるこの騒ぎ。無視するのが一番だそうだ。
それもそうだと思う。アーチャーはブレイカーにセイバーの事を聞いているので、それが正しいと思う。
しかし、アーチャーはいまだに悩んでる。セイバーは悪人なのか、否か。未だにブレイカーの話でしか判断材料がないため、どうすればいいかわからない。
セイバーは美味しいご飯を作ってくれた。だから善人だと信じたいが、ブレイカーが嘘を言ってるとは到底思えない。
だから悩んでる。どのセイバーを信じればいいのだろうか。
「いくわよ。セイバーを殺しにいか——」
そう言ってブレイカーは突然言葉を切る。その視線をアーチャーはおい、そしてそこには——
「ん、おや。久しぶり、ブレイカーにアーチャー」
——セイバーがいた。
◇◇◇◇◇
☆ブレイカー
セイバーを視線に捉えた瞬間、ブレイカーは駆け出した。釘バットを構え、それを思い切り振り抜ける。
セイバーは剣でそれを受け止める。ギリリとブレイカーは歯を噛み締めて、釘バットを押し込んでいく。このままでは負けると判断したのか、セイバーは一瞬力を緩めた。
体制が崩れたブレイカーの腹を蹴り飛ばし、セイバーは一つ息を吐く。そして、剣を構えながら口を開ける。
「いきなりなんだい?僕は少し疲れてるんだ」
「サモナーを殺したからでしょええそうでしょヒーラーのように殺したのよね」
「何のことやら……それに、サモナーには襲われたから。正当防衛だよ。僕は、悪くないさ」
そう言ってセイバーはちらりとアーチャーの方に視線を向ける。彼女は今、どうすればいいか迷っている状況なのだ。故に動けない。
もし、ここで彼女が加勢してくれたら、楽になる。しかし、それは望めないようだ。ブレイカーは深く息を吐き、そして釘バットで空を切る。
「やる気?」
「ええ。今度はきちんとちゃんと完璧に殺してあげるわ」
「まぁ、期待してるよ」
「だまれっ!」
ブレイカーは地を駆ける。釘バットをセイバーに振り下ろすが、それをセイバーは簡単に避ける。そして、お返しにというように、剣を斬り上げた。
ブレイカーは釘バットで抑えるが、それでも弾かれるほどの威力があり、体が軽く宙に浮く。
しかしそのまま吹き飛ばされるほど、ブレイカーは間抜けではない。体を器用に動かし、近くにある家の壁に足をつける。そのままバネのように膝を曲げてセイバーに向かって飛んでいく。
突然のことにセイバーは驚いたが、すぐにその場から体を動かす。直線的な攻撃なのだから、横に動けば避けれるなんて、簡単にわかる。
それはもちろんブレイカーにも——!!
地面に当たる瞬間、釘バットを支えにして無理やり方向転換をはかる。そしてそのまま、セイバーに飛びついた。
セイバーは対応できずに、ブレイカーを体で受け止めてしまう。そしてそのまま、ブレイカーはセイバーに向かって釘バットを振り下ろした。
何度も。何度も。アーチャーが顔をそらしたような気配がしたが、それでもブレイカーは止まらない。
百回ほど潰しただろうか。ブレイカー顔についた赤い血をぬぐいながら、セイバーから離れる。
「……見苦しいところを見せちゃったわね。でも、確かにこれで……」
「見苦しいところを特等席で見せてくれてありがとうね」
声が聞こえた。ブレイカーはゴクリと生唾を飲み、ゆっくりと振り向く。いいや、そんなことあってはならないと、自分に言い聞かせながら。
しかし
そこには
「な、なんで……」
体全身を真っ赤に染めながらも、立ち上がるセイバーの姿があった。
「勇者は死ねないんだよ。嬉しいことにね」
「……ハハッ。やっぱりやっぱりそういうことね!!ねぇ、アーチャー言った通りでしょう!」
ブレイカーは笑い出す。そして、セイバーに指を向けて、まるで答えがわかった子供のような声を発したのだった。
「こいつは仕組まれた勝者!つまり運営側の人間ってことよ!!」
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