4-7【これから何を信じるか決めなさい】
☆ブレイカー
メールを何十回と確認し、何百回も「なんでよ」と呟く。隣でスヤスヤと寝ていたはずのアーチャーも目を覚まし、こちらを見ていた。
メールの内容は単純だが、書いてあることは単純じゃない。サモナーを殺した魔法少女の名前は——セイバー。そう書いてある。
殺したはずの少女が生きていたということが確定する。そんなことを思い、つい先程まで実は死んでいてメールが届いてないだけでは?という期待は打ち壊される。
なぜ生きているかは知らない。しかし、殺さないといけない相手がいるというのは確かなのだ。ならば、やるしかない。
アーチャーはとても心配そうな目で見ている。なんとなくだが、セイバーを殺そうとしていることがわかっているようだ。
彼女はおそらくセイバーのことを信じたい人なのだろう。なんと愚かだとブレイカーは思うと同時に、彼女の狡猾さにひどく驚く。
「いい機会だから教えてあげるわ……セイバーが何をしたかということを。それを聞いてから、これから何を信じるか決めなさい」
ブレイカーがゆっくりと。子供に聞かせるように口を開いた。いつものような喋り方ではないのにアーチャーは一瞬驚くが、すぐにブレイカーの言葉に耳を傾け始める。
そのまま彼女の心はどちらに傾くか。それは、今はまだ誰も知らないことであった。
◇◇◇◇◇
☆セイバー
しまったなぁ。彼女は剣についた血を水で流しながらそう呟く。後ろに転がっていたサモナーの遺体はいつの間にか消えていた。
まさか殺す羽目になるなんて。なるべく殺すなと言われているのに、これじゃ後で叱られるかも。そう思い彼女はため息をつく。
それにこのままじゃ、優しい善良なセイバーさんという仮面が、音を立てて崩れて行く。
——いや、それでいいのかもしれない。
逆に考えよう。このまま危険人物と捉えてくれたら、さらに周りに疑心暗鬼が広がるのではないか?そしたらこの殺し合いも加速する。
どうせ自分から死にたいと願わない限りは死ぬことはないのだ。そんな機会、ほとんど訪れるわけがない。ならば、このままこの流れに身をまかせるとしよう。
「さぁて。どうしようかな……あまり派手な動きは控えないと。こう、ゆっくり内側から壊して行く感じでね……」
そういった彼女は剣を天に掲げる。光が水に反射して、いつもより輝いているように見えた。
◇◇◇◇◇
☆テラー
壁に医療カバンを置き、それを背もたれにしながら何度もメールを確認する。やはりあのあとサモナーは死んだらしい。悲しいと言われれば悲しい気持ちになる。
刺激が欲しかっただけなのに。だが、それは観客として、だ。優秀なスタントマンが消えた今、代わりにスタントマンになろうとは思えない。
ならばどうするか?答えは一つ。代わりにさらに優秀なスタントマンを探せばいいのだ。それこそ、セイバーなどといった魔法少女と互角に戦えるような。
誰かいないか?そう考えていた時、一つ頭に浮かんできた。何故かサモナーが死んでも残っているかの医療カバンを何かに使えないだろうか。
これを使えば殺し合いにのってるものにも交渉できる。私を殺すのこれは消えますので、一緒においてくれませんか?という形だ。
これなら最高の特等席で、最高のショーを観れる。まさに、史上最高やエンタテインメントが、目の前で繰り広げられるのだ。
テラーはそう考えて立ち上がる。手にある未来本を確かめるが、どこにもテラーの文字は書いてない。
つまり今日中に会えばいい。そうと決まれば行動は早く、テラーは日が真上にまできている町の中へと、駆け出していった。
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