4-3【これだからいい子は嫌いなんだよぉ?】
☆ファイター
私は何をしているのだろう。何をして、何を目的にここにいるのだろう。大好きな私の村。大好きなモニター。たったこの二つを守りたいという目的は、もう叶いそうもない。
もう何を目的にすればいいかわからない。この体は動くのに、この瞳は動くのに、この手だけは何もつかめない。
——いや、違う。
掴めるものはある。ただ、それをするのは恐ろしいだけだ。だから、一歩踏み込め。たった、それだけで世界は変えることができる。
掴め。それは優勝の二文字だけ。それを掴むためには、敵意のない存在も、敵意のある存在も全て等しく、殺してしまおう。
もう堕ちるところまで来たのだ。上がる必要はない。堕ちたところから、上にある存在を狙え。
飛ぼうと考えるな。自分は正しいとおまうな。お前は間違っていると理解しろ。それだけで、ほら。
「……歩ける……」
◇◇◇◇◇
☆バーグラー
見苦しい姿を見せてしまった。と、バーグラーは顔を赤らめてランサーに言う。まさか大声で泣いてしまうとは、思いもしなかった。
ランサーは気にしなくていいと言って笑っていたが、バーグラーは年頃の女の子だ。泣き顔を見られるなんて、気にするしかない。
「えっと……とりあえず今の状況を整理しようかね」
ランサーが話題を変えてくる。バーグラーはわかりましたと言って今、自分たちに降りかかっていることをまとめ始めた。
1.この殺し合いに乗っている人物は恐らくガンナーとキャスターのみ。
2.しかしパートナーを失ったブレイカーとファイターはどうかわからない。
3.最後の一人にならなくてもこの殺し合いは終わる。
とりあえず、今すぐ関係ありそうなものをまとめてみる。最悪、いわゆる
バーグラーは勿論、ランサーも生き残りたい。そのためには仲間を増やす必要がある。二人は、誰に会えば安全かを考え始めた。
結論から言えば、一番がアーチャー。次点でセイバーという感じだった。特にアーチャーは前に二人を助けてくれたのだから、なおさら会いに行きたい。
「……そういえば、ランサーさんのスキルって何ですか?」
「あたい?あたいは……如意槍。だったよ。どうやら槍が伸びるみたいだね」
「なるほど……私は罠解除と言って……この鍵を刺せば、罠を解除できるみたいです」
そう言ってバーグラーは鍵を取り出す。小さな鍵だが、これで罠が解除できるらしい。しかし、この場に罠を置けるような人はいるのだろうか?
いるならば、バーグラーはその魔法少女の天敵になりうる。一定以上のアドバンテージを取れるのは、心に余裕ができる。
チラリと時計を見ると、深夜の2時ほど。とりあえず今は休息を取ろうということで二人の意見は一致。
眠気を抑えつつ、ふたりはベッドの上に入り込んだ。すぐに寝れないと思ったが、案外すぐに夢の中に誘われていく。
◇◇◇◇◇
☆ガンナー
ガンナーとキャスター。そして、フェンサーであろうものは今ホテルの一室にいた。明らかにそういうことを目的にしたホテルであるが、今は特に文句はない。
キャスターは気持ちよさそうに眠っている。折れた手は少しずつだが修復されているらしく、痛みはもうないらしい。
今一番気になるのは、キャスターではないが。そう言ってキャスターを見おろす死体に視線を移す。
「お嬢さん、あの時いい子ぶっていたやつだねぇ?……あっさり死んで、馬鹿みたいだねぇ?それに、大切な仲間も殺して……これだからいい子は嫌いなんだよぉ?」
そう言ってガンナーは銃を握りしめる。思い出すのは、先ほどキャスターが寝る前にした会話内容。同盟を組むのはいいけど。と、彼女は一言置いて口を開けた。
「お姉ちゃんの願いを教えて……かぁ……私には願いなんて……」
ない。そうだと思っていたのに。下手に欲を持つと自滅に行ってしまうのだ。だから、彼女は欲はないと自分を抑えていた。
叶えたい願いがなかったら、開幕あんなこと言わない。彼女は自分にずっと言い聞かせていた。お前は大人だと。いい子ではないと。
(今更遅いかねぇ?……いい子には、なってはいけないよぉ?先生との約束を果そうなんて……ねぇ?)
そう言ってガンナーは小さく笑う。ムニャムニャと眠っているキャスターの方を見た後、彼女も眠ろうと立ち上がる。
この部屋にはまぁ当たり前だがベッドは一つしかない。他の部屋に行こうとも考えたが、そうしたらキャスターを一人にすることになる。
ガンナーはため息をついた後、なるべく距離を離しつつ、ベットの中に入っていった。そして最後にチラリとキャスターとフェンサーの方を見た後、ゆっくりと目を閉じるのだった。
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