4-2【こうしたほうが、楽しいさね】
☆サモナー
筆を動かして、空に三つの漢字を書いて見る。治、刺、映。その度に彼女は顎に手を置いて考え始める。
治。これは回復に使うことができる。映は偵察。刺はいざという時に使う切り札として。盾も欲しかったが、彼女とは一切話してないし触れてもない。
試合開始前も含まれるようで正直ホッとしてる。とりあえず今は、セイバーとガードナー。そしてキャスターガンナー以外のスキルなら使えることになる。
食事会を開いてくれたセイバーには感謝しかない。あそこで握手をしたおかげで、怪しまれずに発動条件を満たすことができた。
日付を見る。もう4日目だ。そろそろ動かないと優勝することは無理だろうか?いや、無理ではない。
この戦いは後半になればなるほど盛り上がっていく。今、下手に動くのはばかだ。死んでしまっては、下の子もないからだ。
「サモナーさん。これからどうするんですか?」
隣にいた少女が声をかけてくる。サモナーは少しだけ考えるそぶりをして、ゆっくりと口を開ける。
「ファイターが暴れまわってくれると思うさね。それで参加者が減れば御の字……可能なら瀕死にしてくれるのがいいさね」
「あら。戦うのがいいんじゃないんですか?」
「違う違う。戦うよりも……こうしたほうが、楽しいさね」
そう言ってサモナーは首を切る仕草をする。それを見たテラーはくすくすと笑うと同時に、彼女が持っている本が光り出した。
未来本。彼女のスキルだ。どんな未来が書いてあるのか、サモナーは少しだけワクワクしながらのぞいて見たのだった。
そこに書いてあったのは——
◇◇◇◇◇
☆ブレイカー
今後の問題について、彼女は考えないといけなかった。まず一つ。死亡通知がないセイバーについてだ。
あのあと彼女はセイバーと最後にあったところに行った。しかし、そこには血があるだけで、セイバーの死体はどこにもなかった。
どこに消えたかわからない。とにかく仕留め損なったことは確かであり、今後その見えない敵を相手にしないといけないということも確かだ。
そしてもう一つ。それは他の参加者がセイバーか何をしたかわかっているのかということ。もし、血まみれのセイバーが他の参加者にブレイカーに襲われたといえば……
その時真っ先に襲われるのはブレイカーだ。おそらく、ガンナーとキャスター以外には狙われ始めると考えていいだろう。
ガンナー達には常に狙われているようなものだからいいが、他の面々に狙われたらもう味方はいなくなる。それは嫌だし、ヒーラーの未練を晴らすという目的が達成できないのも嫌だ。
とにかく場所を移そう。もしこの場を誰かに見られたら、それこそ大惨事だ。そう思い立ち上がると、誰かの視線を感じた。
バットを構え後ろに大きく飛ぶ。入り口に立っていたのは、大きな弓を構えた少女だった。彼女は不思議そうな顔でこちらを見つめている。
敵意はないらしい。床に飛び散っている血を見てもなんの反応を示さないが、彼女は机に置いてあるものを見つけて、顔を輝かせて飛んでくる。
そして椅子の上に座り、セイバーが作っていた食事に手を出した。いただきますも何も言わないその少女の対応にブレイカーは少しだけムカついた。
そしてブレイカーは彼女の目の前に座り込み、胸の前で両手を合わせて口を開ける。
「いただきます」
「…………?」
何言ってんだこいつのような目を向けられる。その目を見て、ブレイカーは大きなため息をついて、もう一度声を張り上げた。
「いただきます!!!!」
「…………??」
「いただきますよいただきます!!早く言いなさいよ一人で言ってるなんてまるで私がばかみたいじゃないふざけないでよ早くあなたも言いなさいよそうしなさいなんで黙ってるかわからないけどそれがいいに決まってるんだからっ」
「……いああ……ぎ、ま……す」
とてつもなく片言だが、言わないよりマシか。ブレイカーはため息をついたあと、なんでこの少女にここまで付き合ってるのかと自問を始めて、もう一度ため息をついたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます