3-2【絶対に優勝しようであります】
☆サモナー
めんどくさいルールができてしまった。サモナーは朝セイバーが語ったルールのことを思い出して、少しため息をついた。ここで人を殺したら、全ての参加者に目をつけられてしまう。
それは避けないといけない。チラリとテラーを見ると、彼女は窓から景色をただ眺めていた。
もしテラーがキャスターみたいに戦闘力が高い職種なら良かったのに。そう考えて、サモナーはゆっくりと立ち上がる。
「どこに行くのです?」
「いや、少しやることがあるさね。今のうちに、しておかないとさね」
サモナーはテラーを置いて部屋を出る。目的は一言で言うならば、握手をしに行く。それだけだ。
しばらく歩くと一人の少女に出会う。セイバーが、コップを机の上に並べていた。何をしているかわからないが、とりあえす声をかけてみる。
「……ん?おぉ、サモナーじゃないか!僕に何か用かな?」
「いや、用ってほどじゃないさね。強いて言うなら握手をしてほしいさね」
「すまない。僕は今見ての通り昼の準備に忙しいんだ。もしするなら、準備の後でいいかい?」
そう言ってセイバーは去って行く。あの人数分の料理を作るのだから、とても忙しいのだろう。邪魔するのは、野暮というものだ。
それにセイバーはそう簡単に死にそうにない。握手をするのはまた今度でいいだろう。サモナーはそう言って廊下を歩き出した。
誰かに会えればいいかと考えたが、皆部屋にこもっている。しかし、それは当たり前だとは思う。あのルール仕業の《お陰》で皆、また確信してしまったのだ。ここが殺し合いの場だと言うのを。
仕方ない。部屋に戻るかとサモナーは考えた。その間もずっとセイバーはせっせと昼食の準備をしていたのだった。
◇◇◇◇◇
☆ヒーラー
カタンと薬を机の上に置いてヒーラーは腕を組んで考えていた。薬の数は思ったより少なくて想像より多かった。
解毒剤や頭痛薬。そして、治療薬などと言った、全て治すために使う薬ばかり。本当に毒薬とかは入ってなくて、ホッとはするが少し心細い。
とは言っても、戦闘は全てブレイカーに任せるのだが。ヒーラーは後ろから回復薬を渡したり渡さなかったり。毒薬はあくまで最終手段として残したかった。
その時視線を感じて、後ろを見るとブレイカーが覗き込んでいた。何の用か尋ねると、ブレイカーはビクッと体を震わせてベッドの方に飛ぶ。
「なななななによ!突然話しかけるんじゃないわよ私はただ何してるのかなーと思っただけでそれ以上のことは何も思ってないからね変なことを期待しないでよ本当こんな羊の皮を被った狼なんて嫌いよなんでこんな奴と私は一緒にいるのよわけわかんないわ!!」
「まぁ、誘ったのは私でありますからなぁ」
初日に外に出た後、ヒーラーは目の前にいたブレイカーを誘った。最初は何も喋らないと思ったが、今見たらわかるように大きく性格が変わっていた。
ヒーラーに慣れてくれたと考えたら楽だが、ブレイカーを相手にするのはかなり疲れる。けれど、願いを叶えるためには仕方ない道なのだ。
「ブレイカー殿」
「な、なによ!?」
「絶対に優勝しようであります」
ヒーラーの言葉を聞いたブレイカーはまたピクリと体を跳ねらせる。そして下を向きながら、当たり前よと呟いた。
彼女の耳は、真っ赤に染まっていたのだった。
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