3日目

3-1【あたいは大丈夫だよ】

「3日目にしてようやく二人か。このペースで大丈夫か?」

「大丈夫だ。問題ない……まぁ、見てなって。こういうデスゲーム系とかには、お約束の展開があるからな」

「ほう?それは何か教えてはくれぬでござらぬか?」

「それはお楽しみでござるよ」

「了解したでござる」

「さて、今日はしーすーにでもするでござるか?」

「ナイスアイデア!!早速予約しようぜ!」



 ◇◇◇◇◇


 ☆モニター


 朝からとてつもなく重い空気が漂っている。その理由は簡単で、今日の朝。正確に言えば昨日の夜だが、メールが届いたのだ。


 ガードナーが殺された。


 モニターはガードナーと話したことはない。が、人が死ぬ知らせというのは、嬉しいわけがなく、特に彼女と仲が良かったであろうランサーとバーグラーは朝から何も喋ってない。


 もし、モニターも同じような目に会えばおそらくあの二人より意気消沈してしまい、しまいには自殺してしまうかもしれない。


「なんばぁ考えでるんだや?」

「……いや、何でもないです」


 心配そうにファイターが声をかけてくる。モニターは短く言葉を返したが、本当はとても嬉しかった。


 ファイターは優しい。モニターの趣味であるヨーツーバーのことを否定しなかった。動画投稿などをしてると、周りの人は皆否定から入る。


 そんなことはやる意味がないから


 恥ずかしいから


 それでお金稼げるのは一握りなんだから


 


 現実なんて糞食らえだ。モニターはまだ若いが現実は分かっている方だと、勝手に思い込んでいる。


 私の人生を邪魔しないでほしい。そんな願いがあったから、彼女は今ここにいる。ただ、今はなんとなくわかる。モニターは邪魔者が消えてほしいのではなく、理解者が欲しかっただけだ。


 ファイターは優しい。それに理解者になってくれる。もし、生き残れたら二人で動画投稿をしよう。モニターはそう考えた。


「みんな!おはよう!!」


 その時今の場に合わないほどの大声が聞こえてきた。誰がそんな声を出したか確認したら、そこにいたのはセイバーだった。


 彼女はつかつかと歩きながら、皆の前に立つ。そしてこほんと空咳をしてから口を開けたのだ。


「共同生活のためのルールをひとつ、決めようと思う!」



 ◇◇◇◇◇


 ☆ランサー


 なんで死んでしまったんだ。


 ガードナーは、死んでいいような人じゃなかった。あの時喧嘩さえしなければ、彼女は私たちと一緒にいたはずだ。だからこそ、ランサーは後悔の念に囚われていた。


 あの時無理やりにでも止めておけば良かった。彼女の希望を折るようなことを言わなければ良かった。さらに言えば、真っ先に逃げずに立ち向かえば良かった。


 一度考えると失敗したという思いは、永遠に頭の中をぐるぐると回り続ける。止まらない。止めることのできないそれは、ランサーの心を確実に壊していく。


 考えてはいけないと頭ではわかっているのに、まるでこの体は自分のものじゃないように、とめどなく流れる水を止める術を彼女は持っていなかった。


「……さん、ランサーさん!」


 突如、現実に引き戻される。誰だろうと思い見てみると、こちらを心配そうな顔で見ているバーグラーとアーチャーの姿があった。


「大丈夫ですか?酷い顔色ですけど……」

「…………」


 そんな目で見るなと、叫びたかった。人が死んだんだ、知り合いが死んだんだ。なぜそんなに平静でいられるんだ。お前らに人の血は流れてないのか。


 叫びたかった。


 けど、声は出ない。叫ぶということすらできない。今ここで叫んだら、否定をしたら、それこそ全てが壊れてしまう。


 だからランサーは小さく笑った。小さく笑って、それより少しだけ大きな声を出したのだった。


「あたいは大丈夫だよ」



 ◇◇◇◇◇


 ☆ルール

【この共同生活内で人を殺した場合。その人物は処刑します】

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