2-8【みぃちゃん何も怖いことしてないのにー!】

 ☆バーグラー


 バーグラーはベットの上に座り込んで、一つ息を吐く。ここまでかなり疲れた。よく考えたら、昨日から眠っていない。


 ようやくまとまった休みが取れるな。そう思いながら、大きく伸びをする。どうやら目の前にいる少女も同じなようで、大きなあくびをしていた。


「2日目まできましたね、ランサーさん」

「そうだねぇ……あまり実感わかないな」


 ランサーはそう言って少しだけ笑う。バーグラーだってそうだ。あの、キャスターという魔法少女を相手にした時、全員死ぬと思った。


 けれど今生きてる。これは全て、あのフェンサーという魔法少女のおかげだ。彼女が身を呈して守ってくれたから、私たちは今、ここにいる。


 バーグラーには叶えたい願いがあった。それは人を殺してでも、叶えたいものだ。けれど、考えが変わってしまった。最初は隙を見つけてランサー、もしくはガードナーを殺す予定だった。


 けれどそうはいかなかった。彼女が守ってくれた命は、きっとそれをするためにあるのではない。そう、


 彼女だって一人の人間なのだ。人並みの倫理観は持っている。


 ただ、持ってない人も多い。そのことはよくわかっている。だからこそ、二人で生き残らないといけないのだ。


 本当は、3人で生き残りたい。そのことは言わなくてもランサーは分かっている。少し憂鬱そうな顔に見えるのは、そのためか。


「……明日、ガードナーを探しに行こうかね。このまま、待っててちゃ始まらないしさ!」

「そうですね。ガードナーさんとも一緒に生き残りましょう!」


 そう言って二人は笑いあう。そろそろ夜も更けてきたからか、眠気に襲われていく。二人は何も言わずにベットの中に潜り込んでいく。


 2日目がもうすぐ終わる。



 ◇◇◇◇◇


 ☆キャスター


 あれから何時間も歩いた。けれど、本当に何も見つからなくて、キャスターはプンプンと頬を膨らませて怒っていた。


「フェンサーお姉ちゃん!早く誰かを国民にしたいのに、なんで誰もみつからないのー!!」

「ぁあ……」

「なになに?みんなみぃちゃんにビビってる?なんでー!?みぃちゃん、何も怖いことなんてしてないのにー!」


 そう言ってキャスターはワーワー文句を言う。そしてしばらく経った後「もういいもん!」とだけ叫んで、草の上にゴロンと転がる。


「みぃちゃん寝るから、フェンサーお姉ちゃんは警備をお願い。国王を守るのも国民の大事な使命なのじゃーあ、でも殺さないでね?殺すのは国王がするからねー」


 そう言った後、キャスターは深い眠りに入っていく。それと同時に聞こえるメールの受信音は、今日という1日が終わることを表していた。


 眠っているキャスターを見下ろすフェンサー。その時、後ろから音が聞こえて、フェンサーはゆっくりそちらを向く。


 そこには、大きな盾を背負った、一人の少女が立っていた。


「見つけました、フェンサーさん……!」



 ◇◇◇◇◇


 ☆ガードナー


 チャンスをうかがっていた。ずっと、ずっとこのタイミングを待っていた。


 キャスターが眠り、ようやくガードナーはフェンサーと二人で話すチャンスを得た。ゴクリと生唾を飲み込んで、乾いた喉をごまかす。そして、フェンサーの方を見ながら、ゆっくりと口を開ける。


「フェンサーさん、きっと演技ですよね……殺されたフリをしてるんですよね!」


 そうガードナーは言い聞かせる。その言葉が届いたのか、フェンサーはゆらりと動いて、一歩前に出た。


 その時、ガードナーは小さい悲鳴をあげた。彼女の体は、ボロボロになり、血が流れた跡が残っていた。そして、何か蛆虫のようなものが身体中を這いずり回っている。


 ツンと鼻くるとてつもない異臭。けれど、それでもガードナーは信じたかった。あの、フェンサーがこんなことで死ぬわけがないと。


「さ、さぁ。フェンサーさん。一緒に帰りましょう?ランサーさんとバーグラーさんとも合流しないといけませんから!」


 そう言って彼女は震える手を差し出す。その手を見た、フェンサーはもう一度一歩踏み込んだ。


 ガードナーは少しだけホッとした。私の声に耳を傾けてくれてるってことがわかったから。だから今度は、ガードナーが一歩踏み込んだ。


「フェンサーさん。帰りまーーー」


 そこで言葉が途絶えた。フェンサーが突然走りだし、横を通り過ぎていく。何をしているのだろうと、疑問に思った瞬間、自分の体から赤い血が飛び出した。


 何が起こったかわからない。けれど、フェンサーのレイピアについてる赤い液体の正体は、一目でわかった。


「な、ん、で……」


 ガードナーはそう呟いて、ぐらりと体が揺れて、そして倒れる。どくどくと広がっていく赤い血は、あたりの草木に吸い取られていく。


 フェンサーは彼女の後ろに立った。そして、首の横にレイピアをおいて、一度に横に振り抜けた。スパンと綺麗な音がなり、ガードナーの首が飛んでいく。


「……おえ……ん……」


 フェンサーは最後にそう呟いて、キャスターの横に戻って言ったのだった。



 ◇◇◇◇◇



【メールが届きました】

【ガードナーとフ#2〆<:々:33ーーーー】

【ガードナーとキャスターが戦いました】

【結果、ガードナーは死にキャスターが生き残りました。キャスターには1ポイント。只今の合計は2ポイントです】

【残りの魔法少女は12名です。皆さん頑張ってください】

【そして生存者12名の皆さん。お疲れ様です】

【これよりマジカル☆ロワイアル3日目を開催します】

【現在のトップはキャスターさんです】

【では皆さま、頑張って生き残ってください】

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