2-7【素直じゃないですありますなぁ】

 ☆ヒーラー


 食事会というのは、なかなかに楽しいものだった。と、思う。こんな殺伐とした空気の中でそんなことを感じるというのは不思議な話だが。


 皆が食事を終えて何人かが談笑を始めていた。一番喋ってるのは、おそらくランサーだろう。むしろ黙ると死ぬタイプなのかもしれない。


 ヒーラーも誰かと話をしようかと思った。弱みを握れたなら、この先強く動けると思ったからだ。


 だが、後ろから感じる視線のせいで動かずにいた。ヒーラーはため息をついた後、後ろを向いて、そこにいる少女に声をかける。


「なんでありましょうブレイカー殿」

「な、何よなんでもないわよほらはやく喋りに行くなら行きなさいよ私のことは放っておいていいから勝手に行きなさいよというか目障りなのよはやく消えなさい」

「素直じゃないでありますなぁ」

「ふぁあ!?な、何言ってるのよ馬鹿みたい!その言い方じゃ私が貴女と一緒にいたいって思ってるみたいじゃないそんな誤解が生むような言い方やめてくれる!?ほんとに……本当貴方は馬鹿なんだから!!」


 そう言ってブレイカーはどこかに行こうとする。どこに行くか聞いてみたが、大声で「トイレ!」と言うだけであった。


 ヒーラーは少しだけ迷った後、ブレイカーを追いかけて行く。今はなんとなく、ブレイカーと一緒にいたいと、そう考えたからだった。



 ◇◇◇◇◇



 ☆サモナー


 何故か用意されていた部屋のベッドの上に座り込んで、サモナーは空間に筆を走らせていた。だが、もちろん何か描けるわけはない。


 そんな彼女の横に座っていたテラーはちらりとこちらをみた後、何をしているのかを聞いてくる。


「ん、んー……なんだろう?私にも分からないさね。でも、意味はあるさ。今じゃなくても、ね」

「不思議なことを言いますね……」


 テラーはそれだけ言ったあとにベッドの上に投げ出されていた大きな本のページをめくり始める。けれど、そこには何も書いてなかった。


 一面が空っぽの記憶のように真っ白だ。そんなページをテラーは面白そうにめくっていく。側から見たら、その行動の方が意味がわからないように見えるだろうな。そうおもい、サモナーは苦笑する。


 テラーのスキルはサモナーもよく知らない。サモナー自身も、テラーにスキルの詳細は教えてないため、お互い様ではあるが。


 その時だった。テラーの本が突然輝きだした。何事かと思い、サモナーは目を薄めてその本を見ると、うっすらと文字が浮かび上がってきたのがわかった。


 サモナーの視線に気づいたのか、テラーは本を見ながら口を開ける。


「私のスキルは未来本……1日の終わりに、明日の出来事が書かれた内容が浮かび上がります。先のことが書かれてるなんて、ちょっと不気味ですよね」

「ふぅん……で、どんなことが書いてあるのさね?」


 サモナーの言葉を聞いたテラーは本を読み始める。しばらく経ったあと、パタンと本を閉じてサモナーの方を見る。


 お互いが見つめあったあと、テラーは言葉を選ぶように、口を閉じていた。が、決心がついたのか、ゆっくりと言葉を発するのだった。


「明日、何人か死にます」

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