2-6【私達は生き残らないといけない】
☆ランサー
槍を持った少女、ランサーは意気揚々と道を歩いていた。隣にいる先ほどであったアーチャーも目をキラキラさせているし、おそらく後ろで歩いているバーグラーもそんな感じだろう。
食事会のお知らせ。そんなものを開くなんて、確実に穏健派であろう。だったら早く合流して結託したほうがいい。
もう、誰かが死ぬのを見るのは嫌なのだから。
その言葉を心の名で繰り返すうちに、なにかが心に突き刺さる。その時何か神妙そうな顔をしていたからか、アーチャーがこちらを心配そうな顔で見ていた。
「…………?」
「あ、いや。なんでもないよっ。気にしない気にしない!」
ランサーの心に突っかかるもの。それはあの時別れたガードナーのことだ。彼女とフェンサーが仲がいいことを知っていたのに、ランサーはガードナーの希望を壊してしまった。
責任を感じる。もし、あの時に戻れたら一緒にフェンサーを探しに行くと、提案をすると思う。けれど3人で歩いてる今だって、誰かに襲われたらと考えるとどこかに隠れてしまいたいのだ。おそらくガードナーといてもそうなる。
しかし、彼女だってもうフェンサーがどこにもいないことはわかっているはず。それ以前に、食事方法を知らないのだから、食事会には行くはずだ。
その時謝ろう。そして共に行動をしよう。ランサーはそう考えてまた歩き出す。しばらく行くと、大きな屋敷のようなものが見えてきた。
ここが食事会の会場なのだろうか。ランサー達は扉の前に立ちそう思いながら、コンコンとノックする。しばらくするとギギィと重い音を出しながら、その扉が開いた。
「おお!君たちも来てくれたのか僕はとてつもなく嬉しいっ!」
「えっと……貴女が……」
扉を開けた少女は、青い髪を外に跳ねさせて、まるで勇者のような格好をしていた。その少女は人懐っこい笑顔を浮かべて口を開けた。
「僕がセイバー。ささ、入ってくれ!中に軽い食事を用意してある!他の参加者達ももう食事を始めているぞ!!」
◇◇◇◇◇
☆バーグラー
セイバーに促されて屋敷に入ると、鼻の奥をくすぐるような香りが広がっていた。それに真っ先に反応したのはアーチャーで、ダンっと走り出して用意された食事にかぶりついた。
止めようとしたが、ランサーも走り出したため、バーグラーは一人残される。なぜここに食事できる場所があるのか、もしかしたら毒が入ってるかもしれないとか考えないのだろうか。
「毒は入ってないし、なぜかここには食材が置いてあったのだよ」
「……はぁ」
バーグラーの考えを読み取るようにセイバーがそういう。どうやら皆同じことを彼女に聞いたらしいので、もう先に答えるようにしているとのこと。
とりあえず集まったメンバーを見る。名前がわからないのが多いが、ここにいないメンバーは誰かはわかる。キャスター、ガードナー、銃を持っていた女性。そして、フェンサーだ。
もしフェンサーがここにいたら、彼女はどうしただろう。安全を確保するためにとか言って、全部の料理に手をつけ始めるだろう
そしてすでに食べている少女からの反応を見て、ここに置いてあるのはとても美味しい料理。そんなものを食べたら彼女は、周りに聞こえる声で美味しいと呟き、照れてしまいそうだ。と、そこまで考えてバーグラーは苦笑する。
バーグラーを見ていたセイバーは、少しだけ間を開けて、口を開いた。
「災難だったな。フェンサーの件は……大丈夫かい?」
「……大丈夫じゃないです。でも、きっとあの人は望んでああなったんです……だから私達は生き残らないといけない。この先、なにがあろうと」
「君は強いな。まぁ、今は食事でも楽しんでくれたまえよ!」
セイバーはそう言って食事の席に向かって行く。毒も入ってないだろうし、私も食べようかと思い彼女は歩き出した、
そんな彼女に気づいてか、一人の少女が近づいてくる。彼女はバーグラーに右手を差し出してにこりと笑う。
「やぁ、私はサモナーさね。君は?」
「……バーグラーです」
「バーグラーか。うん、覚えた。それじゃ、親交の証に握手でもしようじゃないかね」
そう言ってサモナーはもう一度手を突き出す。バーグラーは少し悩んだ後、その手を握った。意外に長く握手するため、少しだけ後悔したのはここだけの話。
「おーい!バーグラー!!早く食べに来なよ!!飴玉も美味しいけどこっちも美味しいからね!」
「全く……今いきまーす」
バーグラーはサモナーに短い挨拶をした後、食事の席に入って行く。その姿を見たサモナーは、自分の右手を見て、少しだけ笑ったのだった。
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