2-5【フェンサー隊員!どうすれば良いでありますか!?】

 ☆バーグラー


 森の中をてくてく歩く3人。その中で一番後ろを歩いている少女。バーグラーは前の二人に聞こえないようにため息をついた。


 前の二人。ランサーとアーチャーはルンルン気分で歩いている。その理由は簡単で、先ほど来たメールのせいだ。


 一人はこれで戦いが終わると思ってるし、一人はよくわからないが、食事という言葉に強く反応をしていたため、もしかしたら食べるのが好きなのかもしれない。


 そんな単純な話じゃないということは、ランサーにもわかってるはずだ。だからこそ、何かにすがりたいのだろう。


 なんとなくわかる。わかるからこそ、バーグラーはため息をつく。彼女とこれからやっていけるのだろうか。


 いっそ同盟相手でも探すか。そう考えるが、それはやっぱりやめることにする。もう同盟を組めそうな魔法少女がいるとは思えないからだ。


「はぁ……」


 もう一度ため息をつく。今度はランサー達に聞こえたらしく、こちらを見るが、彼女は曖昧に笑い返した。



 ◇◇◇◇◇


 ☆ファイター


「はーいどうもー!みんなのアイドルモニちゃんですよー!」


 ファイターが居眠りから目を覚ました時、同盟相手であるモニターが何かをしていた。スマホカメラの前でしきりに何かを話している。


 なにをしてるか気になったファイターはわざとらしい声で咳払いをする。その声で気づいたのか、モニターは慌ててスマホを地面に落としたのちに、こちらを見る。


「お、お、おお、おはようございますファイターさん!!」

「……おめぇ、なんばずいよったんば」

「なにしてたって……うぅ……動画撮影です」


 そう言って彼女は説明をし始める。どうやらヨーツーブという動画サイトに動画を投稿するのが彼女の趣味らしく、この世界でもそれをやろうとしているだ。


 そんなに楽しいものなのだろうか。ファイターが何気なしに聞くと、彼女は目を輝かせて早口にまくし立てる。


「そりゃもちろんですよ!確かに低評価がついたりしたら死にてぇなって思いますけど!それでも!見てくれる人がいるんですから、その人達の役にたってる!と思えば安いものなのです!」

「ぞ、ぞうげぇ」

「えぇ!!あ、そうだ!ファイターさんも今度一緒に動画撮りませんか?絶対受けますって!!」


 そう言ってモニターはファイターの肩をバシンバシンと叩く。おとなしい子だと思っていたのだが、全然違う性格だった。


 やはり人は見た目で判断できない。そうファイターは思ってふふっと笑う。その顔につられてか、彼女も小さく笑った。


 その時、ファイターはメールが届いてることに気づく。内容を二人で確認すると、セイバーという魔法少女が食事会を開きたいと言っているとのこと。


 二人で顔を見合わせる。罠かもしれないと思ったが、二人には罠に対して強い力を持っている。


 モニターの【モニモニ動画】は、監視などに使えるし、ファイターの【精霊の手助け】は、一定時間だけ自分の力を跳ね上がらせることができる。


 それにもし罠じゃなかったらと考えたらある意味恐ろしいことが起きてしまいそうだ。危なかったら逃げればいい。そう二人は考えて、歩き出したのだった。



 ◇◇◇◇◇


 ☆キャスター


「つまんないつまんないつまんないのー!!」


 森の中でキャスターが叫んだ。彼女は人に会いたいというのに、誰にも会えないのだ。目的が達成できないのはつまらなすぎる。


 それに、怪物も減った気がする。実際はキャスターに恐れをなしているのだが、そんなこと。幼い彼女にはよくわからなかった。


「もーう!!フェンサー隊員!どうすれば良いでありますか!?」

「あぁ、うぅぃ……あゔ……あ……」

「ふんふん。とりあえず国民を増やそうって?そうだよねー!とにかくみぃちゃんの国に住んでくれる人を増やさないと!」


 彼女は大きく拳を空に突き上げて「えいえいおー!」と大声を張り上げた。その声でさらに怪物たちが逃げていったことは、彼女は知らない。


 そしてその彼女に一人だけ、接近しようとしている少女がいることも、知る由もなかったのだった。

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