2-4【偶然に偶然が重なった結果さね】

 ☆ヒーラー


「食事会のお知らせ……差出人は、セイバー。だそうでありますブレイカー殿……ブレイカー殿?」


 食事会のお知らせと簡単な地図が書いてあるだけのメールをもらったあと、ヒーラーは行くかどうかブレイカーに尋ねようとした。


 けれど彼女は何も言わずに歩き始めている。待って待ってと言わんばかりに、ヒーラーは彼女の手を握る。


「……なによ」

「いや、なによじゃなくて……えっと、食事会に行くかどうか聞きたいのでありますが……」

「なにいってるの貴方バカなのいやバカなのねわかるわ私にはわかるだからバカな貴方に説明してあげるけどこれ確実に罠よこんな場でなに呑気に食事会とか開こうと考えてるのよ普通に考えて罠でしょそんなこともわからないの貴方なんなの貴方こんなバカと組むことになった昔の私を呪いたいわ」

「ハハッ」


 乾いた笑いが出た。たしかにブレイカーが言っていることは正しい。こんなことをやろうとするなんて確実に罠だと言うことは考えていた方がいい。


 だからいかないと言うのが正しい選択。けれど本当にそれでいいのだろうか。ブレイカーは知らないがヒーラーには叶えたい願いはある。


 


 だから、ある意味ちょうどいい。罠だと言うことは確実に敵がいるということ。返り討ちにしたと言い張れば多少気は楽になるだろう。


 勝つことを考えているヒーラーには願っても無い提案。だから彼女はブレイカーの意見を無視して一人で歩いて行く。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよなに置いていこうとしてるのやめなさいよふざけないでよねぇ待って怒らせたなら謝るから待ってって言ってるじゃないのねぇったら」

「じゃあ、食事会に行くであります」

「わ、わかったわよ……」


 ブレイカーは押しに弱い。ヒーラーはその言葉を頭の中に叩き込みながら、歩き始めた。後ろを見るとブレイカーはきちんとついてきていたので、ホッと息を吐いた。



 ◇◇◇◇◇


 ☆サモナー


「……で、テラー。どう思うかな」

「簡単です。確実に罠……私の力を見ずともわかります」


 テラーはそう言ってウンウンと頷いている。まぁたしかにそんなことは言われなくてもわかる。


 サモナーだってバカではない。もし本当にただの食事会なら行きたいが、そんな可能性は低いだろう。


 差出人のセイバーといったか。彼女のことはよく覚えてないが、たしか格好は勇者のように見えた。それだけで性格はわからないのだが、見た目だけなら人はよさそうだ。


「まぁしかし。私だってこのままじっとしてるわけにはいかないさ。色々制約があるからね」

「確か、サモナーさんは一度戦って優勝したんですよね」

「……まぁね。偶然に偶然が重なった結果さね。今回はわからないよ」


 サモナーはそういって空を仰ぐ。思い出す過去の戦い。あんな目は二度とごめんだと、言いたい。


 けれど、言えない。少しだけ楽しいと感じてる自分がいる。いつの間にかここまで染まってしまったのだろうかと、少し笑ってしまう。


 だから。そういってサモナーは立ち上がった。驚いたような顔をするテラーを見ながら、サモナーは口をあける。


「なんであれ、動かないとダメなんだよ。向こうが誘ってるなら、行こうじゃないか」

「……はぁ。まぁ、仕方ないことですね」


 テラーはため息をつく。冷静に場をやれている。こういう人が仲間なら色々と心強いとサモナーはそう思い歩き出した。

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