2-3【……】


 ☆アーチャー


 木の枝に座り込む一人の少女。彼女はジッと辺りを見渡していた。


 弓を構えた少女はアーチャー。先程からこの場所を狩場として、あたりにいる怪物たちを倒し続けている。


 何体か倒すと飴玉のようなものを落とすことに気づき、さらにそれの味が格別であることがわかった。よって少し他人より多く食べる彼女は、淡々と食べるために飴を集めていた。


 今じゃ8個ほど溜まっている。いや、彼女の口の中でコロコロと転がっているのを数えれば合計9個である。


 しかし彼女はただただ飴を集めるためにこんなことをしてるわけではない。彼女のスキルは【サーチアイLevel01】遠くを見渡せることができる単純だが強力なスキルだ。


 Level表記に気になり使い続けたところ、今じゃLevel04にまで上がっている。なんとなく、命中精度も上がっているような気がしてきた。


 Levelマックスになればきっとこの戦いで勝つことができる。だから今は身を隠す。彼女には作戦があるのだから、今はそれでいい。


「……」


 その時ふと、二人の魔法少女の姿が視線に入ってきた。確か、穏健派みたいなことをしようとしていたような気がするが、なぜ歩いているのだろう。


 いや、それ以前に二人いない気がする。一人は確か死んだのだが、もう一人は良くわからない。


 ここで殺すか?そんなことを考えたが、しばらく考えてやめることにする。もしここで変に騒げば、作戦が全て崩れて行く。


 その時だ。歩いている少女二人がバタンと倒れた。なぜ倒れたかわからない。このまま殺されるならいいが、怪物に殺されたら溜まったもんじゃない。


 小さく肩をすくめながら、アーチャーは音を立てずに木の枝から降りる。そして、警戒しながら、慎重に倒れた二人のところまで歩いて行くのだった。



 ◇◇◇◇◇



 ☆ランサー


「お腹減りました」


 そんなこと言われても。と、ランサーは視線で返した。この世界に食事というものはあるのかわからないが、腹が減るということは食事はあるのだろう。


 だが、辺りを探しても食べられそうな木の実などはなく、川にも魚はいない。そもそも水と思えるものはドロドロとしていて、とても飲もうとは思えない。


 餓死で死ぬのはかなり怖いんだろうなぁ。そう思ったが、誰かに殺されるよりかマシか。と、ランサーは勝手に信じていた。


 グーっと腹の音がなる。それを恥ずかしがる気力もなくて、このまま寝てしまおうかと考えていた時だった。


「…………」


 突然目の前に人の気配を感じる。命乞いする力もなく、目の前に立っている少女を見る。彼女はジッとランサーの顔を見つめていた。


 グー


 また腹の音がなる。こんな最後は嫌だなぁ。そう思った時、自分の口に何かをねじ込まれてゲホッと咳き込む。


 だが、彼女の口の中いっぱいに広がる旨味が、これは食べ物だということを認識する前に食べ続けろと判断した。


 それを食べ終わった瞬間、お腹が途端に膨らんで行く。先ほどまでの空腹は何処へやら。彼女はゆっくりと立ち上がる。


「えっと、助けてくれてありがとう。助かったよ」

「…………」


 目の前の少女は何も言わない。弓を持ってるからアーチャーかなとそう言葉をかけると、彼女はこくりと頷く。


 もしかして無口な感じなのか?そう思うがとにかく助けてくれたことには変わらない。ランサーはもう一度手を出して握手をしようとした。


 アーチャーはその手を握らず、弓を握る。そして、迷いもなく矢を放った。


 それはランサーの頬をかすめて後ろに飛んで行く。たらりと血が流れて、まさか殺しにきてるのか。そうか、ここは殺し合いの場。と理解するのに時間はかからなかった。


「あ、あんたまさかあたい達を殺すために……!!」

「……」


 アーチャーは首を傾げながらランサーの横を通る。ランサーは目だけでアーチャーの動きを追っていたら、彼女の歩く先には1つの遺体があった。


 それは怪物だ。怪物の頭に刺さった矢を引き抜いた瞬間、怪物の体が消滅する。その体があったところには、飴が一つ転がっていた。


 アーチャーはそれを拾い、ランサーに渡す。もしかして、怪物を倒してくれ、さらに食料の調達方法も教えてくれたのか?


 いい人すぎる。


 ランサーが感動していると、彼女達のスマホが鳴り響く。まさかまた犠牲者が現れたのかとビクビクしながら、ランサーはスマホを開ける。


「……えっと……食事会のお知らせ……?」

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