2日目

2-1【うるさいわよなんなのよこの世界私はただ死にたいだけなのになんで殺されるようなところに行かないといけないのよ意味がわからないわ死ぬときのタイミングは私が決めるっていうのに他人に決められるなんて絶

 ☆???

「2日目に入ったか。どうだ、面白くなってきてるか?」

「あぁ。あのキャスターとかいう奴。中々に面白い奴だよ。うまく動いてくれればさらに盛り上がるぞ」

「あぁ……ふふ。これで俺らも出世かな?」

「そうしたら焼肉でも行こうぜ。まぁ、なんにせよ。後6日は待たないとだな」

「確かに……早くおわんないかなぁ」



 ◇◇◇◇◇

 ☆ヒーラー


 なんということだ。


 医者のような格好をしたメガネをかけている少女、ヒーラーはスマホを見ながら心の中で呟く。開始同時に安全そうなところに入ってスヤスヤ寝ていたら、いつのまにか一人死んで、いつのまにか日が進んでいた。


 とにかく動かないと。と、思い同居人の顔を見ると、彼女はイライラしてるように何か言葉を繰り替えしていた。


「あの、ブレイカー殿。そろそろ動かないと……」

「うるさいわよなんなのよこの世界私はただ死にたいだけなのになんで殺されるようなところに行かないといけないのよ意味がわからないわ死ぬときのタイミングは私が決めるっていうのに他人に決められるなんて絶対嫌よこのために予行練習を何度もしてたのに御誂え向きに手首には包帯が巻いてあるわこれは怪我じゃないのよ練習でできた傷なのよ名誉なことなのそれなのにこの扱いとかふざけんじゃないわよ本当になんなのよ」

「ワァオ」


 思わずネイティブな声を出してしまう。ヒーラーの同盟相手、ブレイカー。アニメのセーラー服のようなものを着て、ピンクの髪はうしろで二本にまとめている。


 そして彼女の腕には、包帯が巻かれていて、首には鎖がついた首輪がまかれていた。色合いは可愛らしいが、小物などはそんなものとは程遠いものとなっていた。


 まぁ自分の格好も不思議だけど。と、ヒーラーは考える。ひざ下まである白衣に、赤十字のマークが入ったナースキャップ。動きやすいのであまり文句は言えないが。


「とりあえず外に見回りに行ってくるであります。ブレイカー殿はそこから動かないでほしいであります」

「ちょちょっと待ちなさいよまさか私を一人にする気なのふざけないでよ置いて行ったら同盟解除してやるわ」

「えっと……じゃ、一緒についてくれであります」


 ヒーラーはそうとだけ言ってその場から離れる。後ろから聞こえてくるブレイカーの言葉を無視しながら、あたりを散策する。


 歩きながらスマホを操作する。何か目新しい情報はないものか。こう言うものは、1日終わったりするたびに情報が増えていく。と、思う。


 初日の男性が言っていた台詞を思い出す。史上最高のエンタテインメント。つまり、これを楽しんでる者がいる。だとしたら、このまま何もイベントが起きないと言うのは、流石にありえないだろう。


 その時、ふと、ルールの欄にいくつか文章が追加されていることに気づく。サイレントで追加するなんて、ソシャゲのクソ運営かなと、そんなことを思いながらヒーラーはそれを見た。



 ◇◇◇◇◇


 ☆ルール

 8.各魔法少女には、強力なスキルがあります。自分のスキルはこちらで確認できます。→【ヒーラー のスキル】

 9.一定人数参加者が減ると、新しいエリアが解放され、今あるエリアはその後、閉鎖されます。閉鎖された時、そのエリアにいた場合は死亡となりますので、ご注意ください。



 ◇◇◇◇◇


 ☆ヒーラー


 新しいルールはどちらも重要なものだ。なぜ初日に書かなかったのだろうか、何人死ねば新エリアが解放されるのかなと、聞きたいことは多いが答えはかえってくるとは思えない。


 とりあえずスキルを確認するか。ヒーラーはそう思いながら、ヒーラーのスキルと書いてあるところをタップする。


「えっと……【4次元医療カバン いろんなお薬が入ってるカバン。1日に使える回数は限られてるけど、傷を治すお薬もあるよ。ちなみに毒薬とはないよ】……か。毒薬がなくてよかったであります」


 もし毒薬があったらあらぬ誤解を受けてしまいそうだ。なので、完全人を治すための道具しか入ってないと言うのは、助かる。


 ヒーラーという名前から魔法的なやつで傷を治すかと思っていたので、少し残念だが。文句は言えない。


 しかし、あまり薬というのは好きじゃないなが。と。そんなことを考えいたので、後ろから来る気配に気づかなかった。


 ザンッ


 自分の背中に激痛が走る。押されるようになったため、そのまま数メートル転がっていく。


 油断しすぎた。後ろにいた黒い怪物を見ながら、ヒーラーは呟く。逃げようと思ったが、あまり動くとブレイカーと剥がれてしまう。


 ジリジリと距離を詰めていく怪物。ヒーラーは背中から垂れる血が止まらないのに恐怖を覚えていく。


「や、やめ……!!」


 そう言った瞬間、怪物の頭が潰れる。その怪物の血が辺りに飛び立って行き、ヒーラーの顔にもつく。


 怪物の後ろには釘バッドを握りしめているブレイカーが立っていた。ふぅと、一息吐いた後ブレイカーはヒーラーを睨みながら口を開ける。


「全く私から離れるからこうなるのよあんな雑魚相手にビビってるんじゃないわよちゃんとしなさいちゃんとそうしないといつか死ぬわよいえ必ず死ぬわええそうよだから私の側から離れないことねわかったじゃあさっさと行くわよ」

「うっく……とりあえず薬飲んでからでいいでありますか……?」


 そう言いながら、ヒーラーは早速スキルを発動して薬を飲む。しばらくしたら、傷の痛みが引いていくのがわかりホッと息を吐く。


 ブレイカー。性格にはかなり難があるが実力は本物だ。もしかしたら、優勝できるかもしれない。


 なんにせよ死ぬわけには行かない。ヒーラーはブレイカーに礼の言葉をのべてから、共に歩き出した。

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