1-4【あたいに任せなって!】
☆ランサー
さて。
あの後10人の魔法少女が外に出て行ってからおよそ1時間たちいまは22時。いつの間にこんなに時間が経っていたのだろうか。
その間にここに残った四人で話し合って出た結論は、ここに籠城すると言うものだった。ここで戦闘はしてはいけないと言われているため、おそらく誰も襲ってこない。
「とりあえず死ぬことはなさそうだね」
ランサーはそう呟く。その声を聞いたのか、フェンサーはしきりに頷いていた。そんなフェンサーはいま、この四人のリーダー的な立ち位置になっている。
フェンサー自身がそう宣言したのだが、誰も反対はしなかった。この状況で誰かの下に着くと言うのは、何かと安心できるからだ。
「あの、フェンサーお姉ちゃん」
「ん?なんなのだ、ガードナー!」
そんなフェンサーに小柄な少女のガードナーはとても懐いていた。確かに、フェンサーのカリスマ性は高く、近くにいるだけで安心する。
まるで姉妹みたいだなと、ランサーは苦笑する。その言葉を聞いたフェンサーとガードナーは照れながら、お互い見つめ合う。
ここまでいけば恋人か?その言葉は胸の奥にしまっておく。あまり茶化すのは、好きではない。仲間を超えた感情を持ったとしても、それをいちいち言うのはあまりにも無粋だ。
「……いつまで、ここにいればいいんでしょうかね。ご飯とか、今はお腹空いてませんが……」
ポツリと、バーグラーが呟いた。その言葉に少しだけ和んだ空気は、すぐに重くなる。一週間。その時間はあまりにも長い。
それに食事などはどうすれば良いのだろうか。探せばいいのだが、もしなかったら全ての希望を打ち壊されそうで、誰も動けてない。
そのことに気づいているのはおそらくランサーだけじゃない。ランサーは少しだけ悩んでから口を開ける。
「ま、まぁ。最悪あたいが外に出て探してくるよ!あたいに任せなって!」
「いや、そこは私に任せるのだ。ここに残ろうと宣言したのは私。だから、私が責任を持つのだ」
「そ、そうかい?」
渡りに船だ。ランサーはそう思った。そもそも彼女には明確な願いはない。ただよく確認せずにアプリをタッチしてしまったので、ここにいる。
だから危ない橋は渡りたくない。フェンサーの言葉に甘えることにして、ランサーは大きく伸びをした。その時、ふと出口から見える外の景色が自然の中に入ってくる。
一面の森。その先に何かあるのか気になるが、わざわざ地雷原を歩く勇気はない。とりあえず空腹になるまでのんびりしようと、彼女は考えたのだった。
◇◇◇◇◇
☆サモナー
森の中を歩いている大きな筆を持つ和風なゴスロリ服に身を包んだ少女。彼女はサモナーといった。
しばらく歩き続けていると、何かに引っ掻かれた後のようなものがある木が見つかった。それを見て、彼女は「ふむ」といって顎の下に手を置く。
「ここは先ほど私が傷をつけたところ……つまり、ある程度歩くと元の場所に戻さられるってことか」
そう言って彼女は地面に座り込む。今回のこのイベントは、ルールがわからない。前まではもっとシンプルであったはずなのに。
「そもそもサモナーってなにをすればいいんだろうねぇ……この筆で何か書けばいいのかい」
そう言って彼女は地面に筆をつける。思ったより墨は濃くて、黒いシミが草の上に広がっていく。
しかし。当然筆は止まってしまう。理由はもちろんなにを書けばいいのだろの一点だ。全く戦いかたがわからないんじゃ、このままじゃ最初に死んでしまう。
それはそれでいいかもな。そんなことを考えてたら、ふと視線を感じて、振り返ってみる。
「どうも……あなたは、サモナーさん。で、あってますか?」
そこにいたのは大きな本を持った女性。サモナーは何者かと考えつつ、嘘をつく必要もないので、正直にそうだと言葉を返した。
その言葉を聞いて女性はホッとしたような顔になる。そして、その場でにこりと笑って口を開けたのだった。
「私、テラーと申します。サモナーさん。私はあなたと同盟を組みたく思いまして……受け入れてくれますか?」
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