1-2【史上最高のエンタテインメント】

 ☆バーグラー


「マジカル☆ロワイアルの開催……?」


 バーグラーが呟いた。その言葉を聞いた男はバーグラーの方を向いて、大げさに広げていた手を腰に当てた。


「ええ、マジカル☆ロワイアルです。史上最高のエンタテインメント……それが、マジカル☆ロワイアル。難しいことは今から説明いたします」


 そう言って彼はまた指を鳴らす。それと同時にこの部屋にあるであろう14個のスマホが一斉に鳴り響いた。


 どうやらメールが届いたらしい。ちらりと男性を見ると、無言でメールを読めと言っているようであり、バーグラーは仕方なくそのメールを読み始める。そこにはルールと書かれた文章が並べられていた。



 ◇◇◇◇◇


 ☆ルール

 1.マジカル☆ロワイアルとは、あなた方に最初に送ったメールの通りの内容です。つまり、願いを叶えるために殺しあってください。

 2.魔法少女の数は増勢14名です。しかし、その14名からも何名かわけることができます。戦うのがメインの9人。サポートがメインの5人です。

 3.サポートの5名の方々は、基本他人を殺すことができません。では、どうするか?答えは簡単。戦闘職の方と同盟を結んでください。同盟を結べば、願いは二つ叶えられることができます。さらに、戦闘職の方々は補助職の力を独り占めできるようになります。

 4.このゲームは7日間あります。その間に他の参加者を殺してください。殺した時、その参加者には一ポイントが贈呈されます。

 5.7日目の夜。その時、一番ポイントが高い人。もしくは同盟を組んだ二人の願いを叶えさせていただきます。

 6.あなたたちが居る世界には怪物がたくさん潜んでおります。もし、それに殺された時、全ての参加者に1ポイントを差し上げます。

 7.参加者が死んだ時。全ての参加者に、殺された参加者と殺した参加者の名前を書かれたメールを送信します。



 ◇◇◇◇◇



 ☆フェンサー


 本当に始まるのか。


 ルールを読んだ時、フェンサーはまずそう思った。少し前まではまだ嘘である可能性はあった。けれど、ここまでされたら現実であると信じるしかない。


 ここにいる私以外の13人。それらを全て殺さないといけないのだろうか?いや、補助職と同盟を組めば殺す数は減る。


 フェンサーは小さな頭をフル回転させてなんとか答えを探そうとする。彼女だって叶えたい願いはあるが、それはひとを殺してまで叶えるものじゃない。


 ただの希望。もし本当にかなうならいいなーと言ったレベルの考えで、彼女はここにきてしまった。数日前の自分をぶん殴ってやりたいものだ。


「すまんが。戦闘職や補助職のことをもう少し詳しく教えてもらってもよいか?」


 突然そんな声を出したのは、和風なゴシックロリータ服に身を包んだ緑髪の女性。そして、腰には大きな筆をつけていた。


「ふむ。よろしいでしょう。まず、戦闘職の9名ですが……セイバー、アーチャー、ランサー、サモナー、ブレイカー、ガンナー、ファイター、バーグラー、そして、フェンサーです。そして、補助職。テラー、ヒーラー、ガードナー、キャスター、そしてモニターです」


 男がそういうと、筆の女性はそうかとだけ呟き下を向く。何かを考えているようだが、それは何かわからない。


 その間も男性は喋り続ける。どうやら、このロビーから出たら、一つの森のようなところに出るらしい。そこで、戦えということか。


 フェンサーはなんとなくルールをもう一度確認する。そのとき気づいた。それに気づいたとき、気分が高揚していくのがわかっていく。隣にいるバーグラーが不思議そうな顔をしてフェンサーの方を見るが、彼女はそれにすら気づかない。


「さて、何か質問はありませんか?」

「ねぇねぇ!一週間拘束されるっていうけど、その間外のみぃちゃんたちはどうなるの?」

「いい質問です。なに、簡単なことです。一週間の間、貴方達がそこにちゃんといるかのように周りの皆さんが振舞ってくれます。洗脳、ですかね」


 その言葉をきいたみぃちゃんと名乗ったフード部分がコウモリになってるマントを被った少女は、首をかしげる。原理はわからないが彼女の肩のあたりに羽根が浮かんでいて、それをなんだか傾げてるように見えた。あまりわかってないようだが「わかったー」とだけ言った。


 そのあと男性は辺りを見渡したが、誰もなにも言わないためにこりと笑ってロビーの入り口に立つ。


「あぁ、言い忘れてましたが、ここでの戦闘はタブーです。殺しあうなら、外でお願いしますね」


 それだけ言い残し、男性は去っていった。残された14人の少女たちはざわざわと騒ぎ始めた。


 けれどまだどこか現実味がないのだろう。フェンサーは辺りを見ながらそう思う。だから、まだ道はある。


「みんな!聞いて欲しいことがあるのだ!!」


 フェンサーの声を聞き、皆が自分の方を見る。フェンサーはこほんと軽く咳払いをしたあと笑顔で口を開けた。


「なんと!誰も死なない方法があるのだ!!」

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