1日目

1-1【今からマジカル☆ロワイアルの開催を宣言します!】

 ☆バーグラー


《魔法少女システム『バーグラー』起動します》


 そんな無機質な声が美海の中に耳を通り直接入り込んでいく。なんなのだこれはと、尋ねるよりに先に彼女は謎の浮遊感に襲われる。


 それが消えた時、彼女は辺りを見渡す。どうやら広いどこかのロビーのようだが、なぜこんなところにいるのだろう。もしかしたら、夢でもみているのだろうか。


 確か、アプリをタッチしろと言われてタッチした。そこからの記憶がないのでやはり夢か?しかし、夢だとしたら、あまりにも現実味がありすぎる風景や匂い。


 もしかして本当に魔法少女になったのか。


 そう思いつつ、自分の体をちらりと確認する。先ほどまで来ていたパジャマは何処へやら。彼女の服装はまるっきり変化していた


 まず、腕にモコモコした腕貫が付いていた。それだけではない。上は巫女服のようなものがヘソ上までで止まっており、下はスパッツの上に布がまかれており、腰には小さなナイフがくくりつけられていた。


 そして、動物の耳と尻尾のようなものが生えていた。これはもしかして狐か。そう思いしばらくもふもふし始めようとした。


「おっ!みんなー!最後の一人が来たみたいなのだ!」


 突然声が聞こえて来た。その声が聞こえた方を見ると、軍服のようなものを着たとても小さい少女が手をブンブン振っていた。


 こっちに来いと言っているのだろうか。よくわからないが、とりあえず行こうと思い立ちゆっくりとそこに歩いていく。


 何が起こるかはわからない。けれど、美海は無意識に自分の手に込める力を大きくしていた。



 ◇◇◇◇◇



 ☆フェンサー


 自分の呼びかけに応じてこちらに歩いてくる狐耳の少女を見ながら、フェンサーはウンウンと頷いていた。


 この世界に一番早く着たのは、他の誰でもない。フェンサー自身だ。だから、ここに着た時のみんなの顔を見ていて、その顔の千差万別なことに気づいていた。


 目の前の少女はきょとんとした顔で。


 そしてあるものは、怯えたように。


 あるものは、ニヤニヤと笑いながら。


 あるものは、顔色一つ変えずに。


 私は、どんな顔をしていたのだろうか。


 いや、そんなことはどうでもいい。とりあえず狐耳の少女の手を握り、フェンサーは口を開ける。


「こんばんはなのだ!私、フェンサーというのだ!貴方の名前はなんなのだ?」

「フェンサー……?それは、本名ですか?」

「違うのだ。本名じゃなくて、この魔法少女の姿なのだ。きっと、貴方にもあるはずなのだ……ほら、スマホ。そこに書いてあるはずなのだ」


 フェンサーの言葉を聞いた狐耳の少女は、スマホを取り出してペコペコと操作を始める。少し操作した後「あっ」と声を出して、こちらを見た。


「えっと。どうやら私はバーグラーっていうみたいです。よろしくお願いします、フェンサーさん」

「よろしくなのだバーグラー!!」


 そう言ってフェンサーは握手を求めるように右手を差し出す。バーグラーは、フェンサーの顔と腕を交互に見た後、その右手を握った。


 その行動を満足そうに見たフェンサーは、さて。と呟いて辺りを見渡した。ここにいる魔法少女の数は、自分を合わせて14人。メールの通りなら、今から始まることがわかってしまう。


 ちらりとバーグラーの方を見たが、彼女は想像以上に落ち着いてるようだ。今から起きることをわかってるのか、わかってないのか。どちらかは、顔色からは流石にわからない。


「その、バーグラー。少し聞きたいことが……」


 フェンサーの言葉はそこで切られた。彼女たちがいる部屋が突然闇に包まれたのだ。なんだなんだと騒ぎ始めるが、そんな空気を切り裂くように、サーチライトが一点を照らす。


「ハロー!ハロー!!みなさんよく集まってくれました!!この幸運に、我々はとても感謝しております」


 サーチライトに照らされたマスクをつけた男性はそう言ってぺこりと頭を下げる。その動作に何人かの少女はつられてしまい、同じようにしてしまった。


 それを満足そうに見た男性はパチンと指を鳴らすと、落ちた照明は続々とついていく。そしてその光の中を男性は悠々自適に歩いて行き、少女たちの前に立った。


 14人の少女の顔を見渡した後、もう一度男性は頭を下げる。そして、両手を大きく広げて大声を出したのだ。


「では今からマジカル☆ロワイアルの開催を宣言します!」


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