家族
兄の好きだったものを思い出すべく、私は買った一冊の本を読み深める。ページ1枚1枚を、すべて暗記するくらいの勢いで。
……とは言っても、やっぱり読書なんてなれないことだから、すぐに飽きが来てしまいそうだ。
普段は読んだって、教科書の1単元程度。
そんな私には、一冊の本をしっかりと読み切るなんていうちっぽけなことでも、とてもつらいことだ。
例えるなら、夏休みが終わる前日の夜、宿題の読書感想文が一文字も進まないようなつらさ。
そんなにつらいのなら、母に聞けばいいと思うかもしれないが、母は前の夫、つまり私の父のことをかなり嫌っている。どうして嫌っているのかは、聞いたことないけど。きっと母に「私のお兄ちゃんってどんなだったっけ?」なんて聞いたら、「父について行ったんだからろくでもない奴よ。」とか答えて、機嫌を損ねてしまうだろう。だからといって、他に知ってそうな祖父母なんてずっと前に居なくなってしまったし、私にはいとこだって幼馴染だって居ない。私の母は写真を撮りたがらないから、アルバムだって無い。
「やっぱり、記憶しか頼れないなあ…」
なんてつぶやきは、一階のキッチンにいる母からの「つぐ!ご飯できたよ!」という呼びかけにかき消されてしまった。
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