IV 必要とされること

 ──ひつじくん。...日辻くん!!


「う、うぅ。イ、イザナイ?」


 俺が目を覚ましたのは三日後の朝だった。

「良かったー。日辻くん。ごめんね、ボクが無理なお願いをしてしまったばかりに...。」申し訳なさそうにするイザナイ


「ううん、大丈夫。ところで海翔はどうなった…?」


「それがね...日辻くん。海翔くんは.....。」

 深刻そうな表情を浮かべるイザナイ

 海翔は、無事なんだろうか…。






 バタバタバタバタッドカッッッッ


 ────グハッッッッ



 腹に鈍痛が走る。


「ゆうた兄ちゃーーーん!だいじょぶ?だいじょぶなの??」


 いきなり海翔が、俺の腹に駆け込んで来た。


イザナイ、どういうことだよ!!!!!」

 俺がイザナイに訊くと、


「日辻くーん、海翔君がどーーしても転生したくないって言うんだ。でも、海翔君くらいの子は、早めに転生することになっているだけど…。」


 海翔は、絶対に転生しないと言い続けているらしい。


「どうして、転生しないんだ?」と海翔に尋ねると、


「僕ね、ゆうた兄ちゃんと一緒にいたいんだ。転生してしまったら、ゆうた兄ちゃんと一緒にいられなくなってしまうじゃん?」


 思わず涙腺が緩む。『誰かに必要とされる』そんなことがこれ程に嬉しいものなんだな。


 もし、俺が自分自身の存在価値を見つけられたとき

 どんな人間になっているのだろうか。


それまでは、イザナイのもとで何かできることを探そうと、心に決めた。

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