第3話 約束だよ

「おえっ……。気持ち悪い……。」

「あはは、楽しかったー!ねえ、次お化け屋敷行こうよ!」

 もう三つ連続で絶叫マシーンに乗っているのだ。さすがにもう限界である。

「お前自体お化けみたいなもんだから行く意味ないだろ……。それに、もうそろそろ帰ってコチョウランに水あげないと、干からびて死ぬんじゃないのか?」

 綾音は腕を組んで考え込んだ。

「うーん。それもそうだね。来週はどこ行く?」

「あー、そういえば僕の中学校の文化祭あるけど、行く?」

 綾音は満面の笑みで飛び跳ねた。

「わー!行きたい、行きたい!」

 その笑顔が、妙に懐かしく感じた。

「……なあ、綾音。もしかしてお前、彩か?」

「は?誰それ!もしかして勇気くんの彼女?教えて、教えて!」

 僕はがっかりしてため息をついた。

「分かった、分かった。来週教えるから。」

 すると、綾音の頬が膨らんだ。

「本当にー?」

「うん。」

「じゃあ、約束だよ?」

 綾音が小指を立てたので、その細い指に自分の指をからませて、約束した。



「僕と彩は、この駅で会ってさ。」

 次の日曜日。僕と綾音は、最寄り駅のホームで立ち話をしていた。

「へー、んで、結婚すんの?」

 綾音が興味深々の様子で、顔を近付けてくる。

「いや、それがさ。半年前に、もう……。」

 それ以上言うと、涙が流れる。

 僕は歯を食いしばって、涙をこらえる。

 綾音は僕の母校まで、一言も喋らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る