第2話 妖精の願い

「初めまして、勇気くん。」

 コチョウランの隣に、花と同じピンク色のワンピースを着た少女が立っていた。

「君は、一体……?」

「私は……綾音。まあ、簡単に言うと、コチョウランの妖精かな。」

 その少女……綾音は、半透明の体でにっこりと笑った。

 彼女は怖いというより、不思議な感覚がする。本当に、ただの優しい少女としか思えない容姿だ。

「ね、ねえ、綾音。何で僕のことを知ってるんだ?」

「ああ、うん。さっき勇気くんのお父さんとお母さんがね、勇気が最近元気がないから心配だ……て言ってて。」

 彩音は少しうつむいて、僕と目を合わせないようにしていた。

「私、コチョウランの妖精だから、コチョウランの花が全部しぼんだら私消えちゃうのよ。だから。」

 彩音はさっきと同じように笑った。

「勇気くん。あなたと、たくさんの思い出を作りたいの。これは私の、一生のお願いです。」



「……と言われましても何をすればいいのか。」

 日曜日。僕と綾音は遊園地に来ていた。

「なあ、綾音。この生活いつまで続くんだ?」

 綾音はソフトクリーム食べながら考え込んだ。

「んー。コチョウラン意外ともつからなあ。最低でも一か月。」

「ウソだろ?」

「大丈夫、大丈夫。勇気くん以外の人には私見えてないから!」

 綾音は歯を見せて笑った。その態度に少し腹が立った。

「逆に変な人だと思われるよ……。」

「まあ頑張りたまえ。」

 綾音はソフトクリームの下にあるコーンの残りを一口でたいらげると、進行方向左側を指で指した。

「勇気くん、私あれ乗りたい!ねえ、一緒に乗ろうよ!」

 指を指した先には、一回転を三回もするという有名なジェットコースターがあった。

「いや、僕は、ちょっと……。」

 そんな僕の話を聞かずに、僕の手を引っ張って無理矢理ジェットコースターに乗せられた。

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