第44話 猫、犬

 近所を歩いていたらアパート階段下のタイヤの上に猫が二匹、座ってこちらを見ていた。逃げようともしない。

「写真撮っていい?」

「わう」

 話しかけると片方からまんざらじゃなさそうな返答をもらったので、さっそくレンズを向けて、一枚撮った。よし。

 顔を上げると、被写体は猫と犬っぽい猫だった。いや、猫っぽい犬かも。

 待てよ。片方はあんなに耳が小さかったっけ。頭もこんなに長細かったっけ。見かけたときは猫の兄弟かと思ったんだけど。見間違いかな。

 首を傾げていたら学生たちがアパートに入っていった。ひとりは飼い主らしく犬と猫の頭をなでていった。

「あの二匹、仲いいよな」「喧嘩しねえの?」「ぜんぜん」「へええ」

 彼らの話し声が遠ざかっていった。

 ふうん。そうなんだね。

「仲、いいんだ」

 猫っぽい犬が「わう」と鳴いた。



 ここで目が覚めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る