第22話 判定
シンクロナイズドスイミング部全国大会に出場した。
自分たちはローカル学校の極小シンクロ部。まさか晴れやかな場所に立つなんて信じられない。参加校はどこもプロ並みで、目の前で演技を見れば見るほど部員全員が緊張でふらふらになっていった。
いよいよ出番の時。
しかし笑顔で整列できないほど全部員は青ざめている。緊張の極みだ。演技も最悪なことに頭からすっぽ抜けた。BGMがむなしく流れているなか、飛び込んだプールのなかで隣の部員の肩に両手をおいて円陣をつくり、ただぐるぐると回る。この簡単な演技だけをこなすのが精一杯だった。
曲が終わった。演技も終わった。しんと静まった会場が全てを物語っていた。
みんなの目が泳ぐ。気まずい。もうこのまま沈んでしまいたい。
ところが、拍手が起こった。
ひとり立ち、ふたり立ち…スタンディングオベーションとなったのだ。
自分たちの演技は審査員および会場の人たちを感動の渦に巻き込み、結果、私たちはよくわからないまま優勝した。
賞状とトロフィーを受け取り、更衣室に戻った。
みんな、目を合わせ、申し訳なさそうに頷く。誰もが同じ事を考えていた。
「上手いところ、いっぱいあったよねえ」
「自分たち、えんえんとジェンカしてただけじゃん」
部長がつぶやいた。
「偉い審査員の判定基準はわからない」
ここで目が覚めた。
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