第21話 水入り水晶

「すごくきれいな水入り水晶を売ってるお店があるよ」

 自分は鉱石が大好き。それを知って、まだつきあいの浅い顔の知らない友達が嬉しそうに教えてくれた。

 その話に自分は飛び上がるように喜んだ。

 水入り水晶は言葉どおり「水が入った水晶」だ。ウン千年前の水が水晶のなかにあると考えただけで胸が高鳴る。

 その友達が案内してくれるというので、うきうきついていった。

 そこは初めて行く鉱石専門店で、そこの一角を友達が指差した。

「ほら! これ!! 水入り水晶!! 大きいから高いけど、綺麗だよね〜!」

 確かにサッカーボールくらいある水晶だ。

 確かに「水入り水晶」だ。

 だが。

 だが!!

 そこには大きなガラスボール噴水があり、中央に水晶が噴水の水をかぶりながら気持ちよさげに水に浸かっていたのだ。

 友達は自慢げに笑う。

「ね? 綺麗でしょ。ねえ。どうしたの」

「これは‘水が入ってる水晶’じゃなく‘水に入ってる水晶’!!」

「だって『水入り水晶』でしょ?」

「確かに『水入り』だけど、ちっがーーーうっ!!」

「でもお。店員さんに聞いたら、これだって言うんだもん。なんで怒るの」

 期待外れと怒りと脱力。どうしたもんだか。



 ここで目が覚めた。実際に「水入り水晶」はほしいので、起きた後もかなり脱力していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る