第4話 ~初■闘~ /※バグにより一部表記が乱れています※/
村から出ると、そこには広大な野原が広がっていた。
その何の変哲もない風景に俺は心を奪われる。
これから本当に冒険が始まるんだ。そう思うと、胸が沸き立った。
腰にはソード背中には盾。標準的な戦士と言っていいだろう。
冒険に出たときにアイナから渡されたアイテムをポケットに忍ばせてある。
「大事なものよ。生涯大切にすることね」
そう言って黒い長方形の何かを無造作に手渡された。
画面の作りも寸法サイズも、手のひらに収まりきるこの感じ、完全にスマホだっった。
「これは、スマホだよな」
「なんと呼んで使ってもいいわ。私は末端と呼んでいるし」
「ふーん。末端ねえ」
なんだか理系オタクのような呼び方だな。
「かつての時代の使い魔のようなものね。本当に人間は面白いわ」
「じゃあ俺はアカシック・レコードと呼ぶよ」
「大層な名前ね。すべてが記録されている知の貯蔵庫とでも?」
「ああ。これにすべてを記録させていくんだろ? じゃあそういう呼び名でいいじゃねえか」
「ほんと、あなたって呆れる。まさか私の持っている大本の名前をそれにつけるなんて、ね」
「何か言ったか?」
「なんでもない」
「で、このレコードは何ができるんだ?」
「相手の能力の分析、地図、自分の体力を数値化したものを表示してくれる。とかが主要なものかしら。お天気も見れたり。あ、あと知り合いとの通信はできるわ」
「ネット環境は?」
「レイヴンが言いたいことはわかっているわ。攻略サイトとか見れるのかってことでしょう? そういうのはないわね」
「へえ」
今までの返答を聞いて、俺はよくできている代物だと思った。
そうだよ、昨今、攻略wikiとか雑多な情報があるから、惑わされて一人静かにプレイできないんだよな。
あくまでこの世界は自分の力で解くべきなのだ。
「じゃあ、ゴブリン退治に向かうか」
「ええ。ゴブリン幼女をね」
「ああ、そうだ。大事なことを聞き忘れていた。俺、幼女なんて倒したくないぞ。幼女は三歩下がって愛でるものだ」
「大丈夫。彼女たちはやられても血も出ないし、死ぬことはないわ。ラバーストラップに姿を変えるだけ」
「ラバーストラップ? あのオタクグッズのか?」
「そう。獲得したラバーストラップの総量で色々なことができるのよ」
「例えば?」
「そうね。新しい魔法を覚えたり、今まで行くことのできなかったところへ行けたりとか。本当に、色々よ。あの玉座も増築したりね」
なんだろう……すげーワクワクしてきた。こんな体験を、俺はこれからできるのか!
「会話をしていたら都合よくゴブリンが出たわね。最初の相手よ」
「え!?」
「なんだー! 人間かー! やっちゃえー!」
見ればなんとも可愛らしいゴブリンが二匹。
戦闘。初めての戦い――! しかし、テンションが上がっていた俺はとっさには対応できない。
「device、on」
その時、アイナの静かな声が場に響いた。
そして浮き上がる端末。端末はゴブリンの表示画面になっていた。
「レイヴン。端末の操作は脳の意識で行う。丁度いい。やってみるんだ」
「脳波で直接操作!? 近未来だな!」
なんだかゴブリン相手に熱い展開だ。
「さっきのやり方で良いんだな! アカシック・レコード! オン!」
キュイイイイイイイイイン! ガガガガガ!
「え、な、何!?」
「あ? ど、どうなってるんだアイナ!?」
無知な俺はいざしらず神であり、この世界のことは知り尽くしているはずのアイナが、驚きの声を上げる。
プログラムコード。エラー。エラー。エラー。エラー。
シュウウウウウウウウウウウウウゥゥゥ……
まさか、不良品か? そんな言葉が頭をよぎったが、どうやら違うらしい。
しばらくすると俺の端末は空中に浮いて正常に作動している。
訳が……わからない。
「どういうことだ? アイナ」
「私にもわからない。あっレイヴン!」
「たべちゃうぞー!」
「くっ!」
襲い掛かってきたゴブリンをいなすと、俺は戦いの最中であることを思い出す。まずはこいつらをなんとかしないと。
敵もこちらも二人。ならば一人を脱落させれば戦況は優位になる!
「ゴブリンAを狙うぞ、アイナ!」
「わかった。スナイプシュート!」
アイナが後方から矢を放った。それはゴブリンA の動きを止める。
もう技を覚えられるのか!?
そこですかさず俺はレコードを操作しある技を覚えるーー
「ダブルアタック!!」
ゴブリンの脳天へと強烈な二連打を叩きつけた。
「きゅう~」
致命打となったゴブリンAは可愛らしい声を残し土色の宝石へと姿を変えた。そしてレコードへと吸い込まれる。
一体のゴブリンを倒したあとは消化試合だった。端的にいうと物理で殴った。
「さて、これでラバーストラップが二個、だな」
「幸先の良いスタートね。とは言え今日はこのくらいにして休みましょう。テントを張るわ」
「手伝いたい……ところだけど、なんか力が出ない。頼む」
「ええ。休んでいて。明日は森を抜けて、明後日にはゴブリンのアジトにつくと思うから」
「ああ……。なんか、悪い」
そのまま俺の意識は沈んでいった。
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