第2話 世界へ降臨…の準備中―now loading―

「さて夫よ。いや、ここは未来の夫と改めよう」

「どっちでもいいけど」

「うむ。まあそれはいい。それでな、夫よ」

「だからなんだよ」

「夫にはまず真っ裸になってもらわねば困る」

「どういうことだよ!?」

「いや、だって服が日本のまんまじゃろ? ファンタジー世界なんじゃ。それらしい服装をしてもらわねばな」

「確かに一理あるけど。神様なんだから俺の体のサイズくらい知っているんじゃないのか?」

「神にもできることとできぬことがあるのじゃよ。ほら、脱げ」

「って、お前そんな力どこから出てくるんだよ!?」


 ものの数秒で真っ裸にされた俺は恥ずかしさに憤死していた。

(幼女に……幼女に裸を見られている……)

 無論そんな状況なのだから、俺のあそこはいきり立っている。

 そんな姿を意にも介さないように神―いい加減名前を名乗らせるべきだ―はどこから取り出したのか採寸道具を持って俺の身体を測り始める。

 耐えろ。耐えるんだ、俺。この羞恥の極地に耐えるんだ!

 しかし、あまりの恥ずかしさに声が出てしまった。


「えっと、名前はなんて言うんだ?」

「うむ? 我か? 我の名はベルじゃ」

「じゃあベル。あそこの長さを測るのはよしてくれないか」

「ふふふ。意外にでかいの」

「やめてー!」


「さて、採寸完了じゃ」

「シクシク……」


 俺は男として何か大事なものを奪われた気がして、崩れ落ちた。


「で、夫よ。どんな服が良い? できるだけオーダーには答えるぞ」

「そ、そうだな。じゃあこざっぱりした服が良いな」

「現代の若者じゃのう」

「いや、俺もいい年だからな。あからさまに勇者みたいな服が良い! とは言えねえよ」

「まあ良い。ではそれなりの生地におしゃれな色合いの服にしてやろう」

「……おお!」


 それは、たしかに魔法だった。

赤を基調にし黒のワンポイントのある綿でできた上着に、下のズボンは灰色がかった革のズボンだった。


「どうじゃ?」

「なんか、あれだな。俺に似合わなくないか?」

「そうでもないぞ。馬子にも衣装と言うじゃろう」


 よく知っているな、そんなことわざ。

まあ、自称神というだけのことはあるのだろう。


「それで? 服は決まったがどうするんだ?」

「あとは決めることは特にないぞ。職業も決まっておる」

「へえ。なんの職業なんだ?」

「『繋ぐ者』(アン・ディビデッド)じゃ」

「繋ぐ者? また変な職業名だな。どんな職業なんだ?」

「簡単じゃよ。種付けして中出しする職業じゃ」

「意味わかんねえよ! なんだそれ、職業じゃねえよ!」

「まあ、時期に分かる」

「うん? ああ……」

「それから三船俊蔵みふねとしぞうよ。この世界での名前を入力するのじゃ」

「へ?」

「ゲームを始めるときに最初に名前を入力するじゃろう? あれじゃよ」

「あー。まあ、なんとなくは分かるが。じゃあ、美空ひばりっと」

「お主な……」

「だめ? 昭和の歌謡スターだぞ」

「いや、そこはAKBのなんとかではだめなのか?」

「実はよく知らねえんだ。オタクだから」

「オワットルの」

「うーん。でも急に名前ったってなあ」

「例えばお主はいつもゲームではどんな名前を使っとるんじゃ?」

「俺? 俺はゲームでは女主人公でやってるから、男の名前なんて思い浮かばねえよ」

「理由は大体想像がつくな。ケツを見たいんじゃろう」

「当然だろ?」

「じゃあ、男の名前なんてこれっぽっちも思い浮かばんのか?」

「待て待て……そうだなレイヴンにしよう。なんとなくかっこいいだろ?」

「中二病じゃったか。なんかそんな名前じゃのう。ちなみにゲームで女の子のキャラクターを主人公にしとったときはなんという名前にしとったんじゃ」

「あんころもちとか」

「は?」

「こたつにみかんとか」

「最近の人間は理解不能じゃな。まあよい。これで世界にアクセスする準備は整った。ではこの拠点、神の座から様々な世界へ降り立つぞ。準備は良いか?」

「なんだって? 神の座? 世界? 意味不明なんだが……」

「まあ、いちいち説明するのも面倒じゃ。いくぞ。プログラムコード『零、始まりの村』」


――コンバート!

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