アン・ディビデッド!
@mikuniarha
第1話 俺、ロリ神の夫になります
闇の中、俺を呼ぶ声がする。
その声は優しく、凛々しく、気高く、なんとも形容しづらい少女の声だった。
「う……ここは?」
薄ぼんやりとした白い光が俺を包んでいる。
それはなんとも言えない柔らかな光で、とても暖かく感じた。
夢の中のようなきがするのだが、体は重く現実感がある。
「起きたか、夫」
その声とともに、白い光が収束する。
―ー冷たい。
そう思い顔を横にすると、床は透明なガラスでできていた。
下に写っている景色は……宇宙。
(なんだ、ここは……?)
俺がそんな思案にくれていると、声が今度は少し怒ったような風に発せられた。
「おい夫、どこを見ている。私の方を見ろ」
夫、夫ってさっきからなんだ?
俺はこの歳二十六歳のフリーター。深夜アニメが大好きな変態であること以外、特徴らしい特徴もない、人畜無害な彼女いない歴イコール年齢の普通の男だぞ。
それが夫って。なんだ? この声の主は俺の妻か?
「そうだ。お前の妻だ。ちなみに薄い金髪のつるぺた幼女だぞ」
「そうかい」
考えていることを読まれたという意味不明な自体にも、俺は冷静な頭で対処する。
なぜならばこれは夢であると、俺は理解したからだ。
夢ならば、まあどんな事が起こっても不思議じゃない。
「夢か。そうだな、いっときの夢の様なものだと思えばいい。人生のような、夢だ。目が覚めるまで、この夢を愉しめばいい」
それからしばし沈黙があった。俺は何をこの女に問いかけるべきか思案する。
「お前は何者だ?」
「私は神である」
(神様、ね。で、神様よあんたは俺になんのようなんだ?)
「用件は簡単だ。お主はこの世界で修行を積み、我の夫としてふさわしい男になって欲しい」
また沈黙。
「どういうことだって?」
意味不明な用件に流石に上体を起こしてしまう俺。
そこで俺は見てしまった。
神を、見てしまった。
つまり、玉座に座る一人の少女を。
その体は細くしなやか。キメの細かい肌は純白に近い。
組んだ足は白糸のように細く、ただそれだけで気圧されるものがある。
白金に近い髪は月のように鮮やかで薄い光をたたえている。
そして特徴的なのはーーあまりにも不自然なのに最初に目には入らなかったものがある。
それは翼だった。一切の穢のない翼が、まるでそこにあるのが自然で、彼女にふさわしく、座る玉座にふさわしいかのように折りたたまれていた。
それだけでも、なんというか、こう、凄いのだが、彼女をよりいっそう際立たせているものがある。
彼女は全裸だった。
「失礼な夫だな。服は着ておる」
「いや、お前のそれを服と形容するのは、俺の主義に反する」
訂正。彼女はほぼ全裸だった。
着ている服というのが、女性の大事な部分をほぼ隠していない。
いや、はっきり言ってこれならば全裸のほうがマシというか、より卑猥だった。
「そ、それで結局、お前は俺に何をさせたいんだ?」
「ふふっ。まあ、そう焦るな夫。というよりも流石じゃのう。我のこの姿を見ても物怖じせずに会話をすることができる。やはり未来の夫に相応しい。傑物じゃの」
「お前が何を言っているのか理解できん……」
「まあ、流せ。用件は先程も言ったとおり簡単じゃ。ともかく我の夫になるようこのファンタジーな世界で修行を積むのじゃ」
「ファンタジー世界……?」
「そうじゃ。日本人が考えるファンタジー世界じゃ。まあ、ちと違うがの」
「ドラゴンとか、いるのか?」
「おるぞ」
「魔法とか、あるのか」
「あるぞ」
沈黙。
「俺はもしかしてすげーいい夢を見ているんじゃあ……あ、いや。待て」
「ん? どうかしたかの」
なぜだか神と名乗った少女は意地悪くかつ無邪気に笑っている。
「俺、痛いのとか嫌なんだけど。死んだりするんだろ? それは勘弁してほしいわ」
「大丈夫じゃ。この世界には女しかおらん」
「は?」
「だから、ドラゴンの女とか、サラマンダーの女とかそんなんじゃな」
「女? 女って主に児童ポルノ法に違反するようなだったり非実在青少年的なあれなのか?」
「そうじゃよ? 嬉しいじゃろ」
「……」
嬉しい……のだろうか。あまりにもなんというか都合が良すぎないだろうか? どんな夢だよ。
「わかった。わかったよ。楽しむ……かこの夢を」
「うむ。そうじゃ。難しい理屈なぞ捨ててしまえ。夢のような人生を楽しめ、夫。夢は始まったばかりじゃからな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます