第44話 vsジャガーズ【最終回 裏】①

 七回裏。スコアは2-3、サンライズの1点ビハインド。いよいよ、最後の攻撃が始まる。

「ジョー、よけいなことは考えるな」

 俺はジョーを呼び寄せ小声で指示を出した。

「ダガーJもまもなく100球だ。スパイクカーブの精度も落ちてきている」

「オーケイ」

「おまえには直球で押してくるだろう。追い込まれる前に叩け!」

「アイアイ、サー!」

 ダガーJの真似をしたジョーが、ニコリと笑って打席に向かった。


「決着をつけようか、アンルーリー……!」

 肩で大きく息をするダガーJ。さすがの巨漢もひとりで六回を投げ抜き、かなりスタミナを消耗しているようだ。

「ジョーさん! 頑張ってえ!」「しばけ! ジョー!」

 サンライズベンチからも最後の声援が飛ぶ。1ボール1ストライクからの3球目――


「ここよっ!!」


 握力が落ちてきたのか、高めに浮いた速球をジョーは見逃さなかった。振り遅れないよう短めに持ったバットを真上から振り下ろす。

 鈍い音が響いた。土のグラウンドに叩きつけられた打球は大きくバウンド。

「サード! 刺せるぞ!」

 マスクを脱いだアレックスが指さし叫ぶ。サードがジャンプして捕球し、ファーストへ送球したとき――

 ジョーが大きく跳躍した。ヘッドスライディングに土煙が立ち込める。


「…………セーフ!!」一瞬の逡巡の後、一塁塁審の両腕が真横に広がった。

「YES!!!!」泥だらけのジョーが拳でベースを叩く。

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