王濛9  自他称イケメン 

王濛おうもうと言えばイケメンである。

イケメンなのである。


例えば中書郎ちゅうしょろうの官位を得、

中書省ちゅうしょしょうに出仕することになった。


この時は雪が降っていたという。


中書省に到着した王濛、

車から降り、公服を着こなして登場。


その様子を遠くから眺めていた、

当時の中書令ちゅうしょれい

つまり王濛の上司となる、王洽おうこうさん。

なお王導おうどうさまの息子さんである。


かれは嘆息しながら言った。


「あんなイケメンが

 この世に二人といるだろうか!」



さぁ、そんなイケメンが病を得た。

簡文かんぶんさまにこき使われたせいだ。

あっという間に重篤となる。


布団に横になり、ろうそくの下。

扇子を弄びながら、嘆じて言う。


「これほどのひとが、

 40まで生きられんとはな!」


お、おう。

ご自身で仰るんですね。


そして、死亡。


葬儀に赴いた劉惔りゅうたん、王濛の棺に、

お気に入りの扇子をプレゼントした。


そして慟哭し、ぶっ倒れた。




王長史為中書郎,往敬和許。爾時積雪,長史從門外下車,步入尚書,著公服。敬和遙望,歎曰:「此不復似世中人!」

王長史は中書郎と為り、敬和が許に往く。爾の時には積雪し、長史は門外より下車し、步き尚書に入り、公服を著く。敬和は遙かより望み、歎じて曰く:「此れ復た世中の人に似たらず!」と。

(容止33)


王長史病篤,寢臥燈下,轉麈尾視之,歎曰:「如此人,曾不得四十!」及亡,劉尹臨殯,以犀柄麈尾箸柩中,因慟絕。

王長史の病い篤かりしに、鐙下に寢臥し、麈尾を轉じ之を視、歎じて曰く:「此くの如き人、曾て四十を得たらざらんか!」と。亡ぜるに及び、劉尹は殯に臨み、犀柄の麈尾を以て柩中に箸け、因りて慟き絕す。

(傷逝10)




王洽

晋書では「王導の息子たちの中で一番有名だよ。まあ夭折したけどね」と書かれている。実際この人の伝見てると、この人が長生きしてたらいろいろ違ったんじゃね的ふいんきもにおわされている。琅邪ろうや王氏って、王導の息子世代だとむしろ目立つのは王羲之おうぎしとか王彪之おうひょうし王胡之おうこしとかだからねぇ。

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