孫綽6  孫綽と支遁   

孫綽そんしゃく許詢きょじゅん、二人は白樓亭はくろうていという場所で

過去の賢人偉人について評論する。


それを聞く支遁しとんにとっては特に

関わりのない人の話ではあったのだが、

聴き終わると、言う。


「お二方は、なるほど。

 才能も詩情も深くお備えのようだ」



王坦之おうたんしと支遁が西州、

恐らくは武昌ぶしょうの辺りで

論談をかわすことになった。


観客は孫綽や韓伯かんはくなど。


この時、支遁はどうにも

うまく論を構築しきれない。

小さくまとまりがちに

なってしまっていた。


その様子を見て、孫綽は言う。


「法師の今日の様子は、あれだな。

 ぼろぼろの綿入りの着物で

 いばらの中に

 突っ込まれたかのようだ。


 あちらこちらで引っ掛かっておられる」




孫興公、許玄度共在白樓亭,共商略先往名達。林公既非所關,聽訖云:「二賢故自有才情。」

孫興公、許玄度は共に白樓亭に在り、共に先往の名達を商略す。林公は既にも關わる所に非ざれど、聽き訖えて云えらく:「二賢には故より自ら才情有り」と。

(賞譽119)


王文度在西州,與林法師講,韓、孫諸人並在坐。林公理每欲小屈,孫興公曰:「法師今日如著弊絮在荊棘中,觸地挂閡。」

王文度の西州に在すに、林法師と講ず。韓、孫ら諸人は並べて坐に在り。林公が理は每に小しく屈せんと欲し、孫興公は曰く:「法師が今日は弊絮を著け荊棘中に在し、地に觸れ挂閡したるが如し」と

(排調52)




この二つは、変にこの二つだけで語るべきじゃない感じはしますね。支遁と孫綽とが交した、数多なすやり取りの一幕的な感じでとらえるのが正しそう。たくさんのやり取りの中じゃ、アゲにもなるだろうしサゲにもなる。それにしても孫綽が残してる比喩の面白いこと面白いこと。

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