嵆康2  白起の瞳    

嵇康けいこう、弟子の趙至ちょうしに語っている。


「君の瞳の黒目を見る感じだと、

 くっきり白黒に分かれているさまは

 戦国しんの名将、白起はくきを連想させる。

 ただ、おそらく白起の瞳は

 もっと大きかったのだろうな」


すると趙至、こう返答する。


「日時計は小さくとも

 刻限をきっちり示しますし、

 短い竹の管でも、

 季節の移り変わりを感じ取ります。


 大きければいい、

 と言うものでもないでしょう。

 ただこの目で、

 どれだけ適切にものを見れるか、

 ではありませんか?」




嵇中散語趙景真:「卿瞳子白黑分明,有白起之風,恨量小狹。」趙云:「尺表能審璣衡之度,寸管能測往復之氣;何必在大,但問識如何耳!」


嵇中散は趙景真に語るらく:「卿が瞳子の白と黑とは分明し、白起の風有り、恨むらくは量の小狹なるを」と。趙は云えらく:「尺表にては能く璣衡の度を審らかとし、寸管にては能く往復の氣を測りたらん。何ぞ必ずしも大の在らん、但だ如何なるを識るやを問いたるのみ!」と。


(言語15)




趙至

嵆康の弟子。だい郡出身という事なので、もしかしたら鮮卑せんぴかもしれない(というより、そうだと無駄に面白い)。劉孝標りゅうこうひょうの注がアホみたいに長く、かれのことが大好きだったんだろうなぁと思わされる。才覚を備えながらも驕ることがなかったと書かれており、確かに嵆康にさらっと言い返すようなエピソードを残すくらいなんだから相当だったんだろう。


白起

戦国秦の恐怖の象徴。長平ちょうへいを忘れるな!

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