何晏3  強敵(とも)  

何晏かあんが老子に注を付けて、

完成したものを持って王弼おうひつを訪れた。


王弼、その注の精妙さを見て、

たちまち感服し、言った。


「このような人であって、

 初めて天と人とのありようを

 語ることができるのだ!」


王弼は王弼で

老子に注を付けていたのだが、

それは破棄して

道と徳とを語る論と言う事にした。



ただ、これの異論が

合わせて載っている。



何晏が老子注を

まだ書き上げていなかった時に、

王弼のもとに訪問したことがあった。


そこで王弼の老子注について聞き、

自説では、王弼説に及ばないところが

多かったと悟ったが、

それらを上手く言葉には表せず、

ただ聞きながら頷くのみであった。


こうして何晏、老子注の作成をやめ、

道徳論として方向を切り替えた。




何平叔注老子,始成,詣王輔嗣。見王注精奇,迺神伏曰:「若斯人,可與論天人之際矣!」因以所注為道德二論。

何平叔の老子を注し、始めて成るに、王輔嗣を詣づ。王は注の精奇なるを見、迺ち神伏して曰く:「斯くなる人、天と人の際の論を與うるべきが若きなり!」と。因りて以て注したる所を道德二論と為す。

(文學7)


何晏注老子未畢,見王弼自說注老子旨。何意多所短,不復得作聲,但應諾諾。遂不復注,因作道德論。

何晏の老子が注の未だ畢わらざるに、王弼の自ら說ける老子の注が旨を見る。何が意に短ずる所多かれば、復た聲を作すを得ず、但だ諾諾と應ぜるのみ。遂には復た注さず、因りて道德論と作す。

(文學10)




どっちが正しいのかわからないけど、お互いに相手に敵わないと思ってしまっているとか、それなんておいしいライバル関係なんですの……ここにきて王弼さんの株が爆上がりである。影薄いけど。

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