桓玄20 不以其道得之  

桓玄かんげん殷仲堪いんちゅうかんを殺した頃の話だ。


桓玄、論語の講義を受けていた。

やがてその講義が里仁りじん第四に差し掛かる。



富與貴是人之所欲

 富と名誉は、

 誰もが欲するところである。


不以其道得之不處

 これらを不実な手段で得れば、

 いつまでもその地位には

 おれないだろう。



殷仲堪、楊栓期ようせんきと言った人々を

自らの手で破滅させた自覚のある桓玄、

この一文に、顔を青ざめた。




桓公初報破殷荊州,曾講論語,至「富與貴,是人之所欲,不以其道得之不處」。玄意色甚惡。


桓公の初にして殷荊州の報破せるに、曾て論語を講じ、「富と貴きとは、是れ人の欲したる所。其の道を以て之を得ざらば處らざりき」に至る。玄が意色は甚だ惡し。


(尤悔17)




いやいや、ここで青ざめるんなら

簒奪なんてしませんから……。




里仁第四


子曰。


富与貴。是人之所欲也。

不以其道得之。不処也。

 あくどいやり方で手に入れた

 富貴は身につかないよ。

 

貧与賤。是人之所悪也。

不以其道得之。不去也。

 貧乏になっても、さげすまれても、

 正しいことの結果としてなら、

 そこを嘆く必要はないよ。


君子去仁。悪乎成名。

 君子は仁には殊更には拘らない。

 ただ、名を上げることに

 汲々とはしない。


君子無終食之間違仁。

造次必於是。顚沛必是。

 こんな感じだから君子は、

 食事をしている間にも

 仁から逸脱した行為はしない。

 ほんのふとした瞬間にも、

 とっさのタイミングにも。


ごめんなんか微妙に

老子的解釈が混じった気がする。


まあいいや。

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