桓玄18 桓玄カンジワルイ

桓玄かんげん、一言で言うと、感じが悪い。

だから、悪口をポンポン言っている。



たとえば、祖廣そこうというひとは、

歩くときにいつも首をすくめていた。


そんな祖廣が桓玄を詣でた時、

車から降りた祖廣を見て、桓玄は言う。


「おや、外がこんなに晴れ渡っているのに、

 祖廣殿はまるで未だ部屋の

 奥まったところに縮こまって

 おられるかのようだな?」



また桓玄、

気が利かないやつを見るたびに、

イラつきながら言っていた。


「あなたは美味で知られている

 哀家の梨を手に入れても、まさか、

 蒸して味わいを台無しにしてから

 食べているのではあるまいな?」



そんな感じだから、いとこの桓脩かんしゅうにも

だいぶ恨まれていたようである。


まさに簒奪をなそうか、と言った頃、

桓玄、桓脩の家に訪問した。


桓玄が桓脩の母の氏と

会っているところを見計らい、

桓脩、襲撃の計画を立てようとした。


それを知った庾氏が言う。


「お前たち、どうかもう少し、

 我が余生を静かに過ごさせておくれ。


 私は桓玄のことを

 我が子のように育ててきた。

 そんな子が殺されるのを見るのは、

 どうにも忍びないのです」




祖廣行恆縮頭。詣桓南郡,始下車,桓曰:「天甚晴朗,祖參軍如從屋漏中來。」

祖廣は行ぜるに恆に頭を縮む。桓南郡を詣でるに、始め下車せば、桓は曰く:「天の甚だ晴朗たるに、祖參軍は屋漏が中より來たるが如し」と。

(排調64)


桓南郡每見人不快,輒嗔云:「君得哀家梨,當復不烝食不?」

桓南郡は不快なる人を見たる每、輒ち嗔りて云えらく:「君の哀家が梨を得たるに、當に復た烝食せざるや不や?」と。

(輕詆33)


桓玄將篡,桓脩欲因玄在脩母許襲之。庾夫人云:「汝等近,過我餘年,我養之,不忍見行此事。」

桓玄の將に篡ぜんとせるに、桓脩は玄の脩が母の許に在りたるに因りて之を襲わんと欲す。庾夫人は云えらく:「汝ら近ならん。我れに餘年を過がしめんか。我れ之を養い、此が事の行わるるを見るに忍びず」と。

(仇隟8)




えっ、桓脩からも恨まれてたのこの人……上手く転がれば、桓脩さん、劉裕りゅうゆうの仲間になってくれたのかもしれませんわね。まぁ立場的に難しかったろうけど。

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