桓玄10 泉下の殷仲堪  

桓玄かんげん殷仲堪いんちゅうかんを殺した後の事である。


桓玄の配下には、殷仲文いんちゅうぶんがいた。

殷仲堪の従兄弟である。


桓玄は問う。


「きみの親戚の殷仲堪は、

 さて、どんな感じの人だったかな」


殷仲文は答える。


「この世の中は照らせませんでしたね。

 ただ、あの世は

 照らしていることでしょう」




殷仲堪喪後,桓玄問仲文:「卿家仲堪,定是何似人?」仲文曰:「雖不能休明一世,足以映徹九泉。」


殷仲堪の喪さる後、桓玄は仲文に問うらく:「卿が家の仲堪、定めし是れ何ぞの人に似たらんか?」と。仲文は曰く:「一世の休明たる能わざると雖も、以て九泉を映徹せるに足る」と。


(賞譽156)




自分が死に追いやった相手のことを親戚に聞くとか、いったいどういう神経なんだかよくわかんねえんだけど、けど劉裕りゅうゆう謝晦しゃかいみたいなケースもあるしなあ。この辺のやり取りが発生する原理的なものは気になる。

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