桓玄3  賢賢易色    

桓玄かんげん殷仲堪いんちゅうかんのところに訪問した時、

殷仲堪は妾のところで昼寝していた。


昼寝(意味深)していた。


なので部下たち、桓玄を押しとどめて

いまはお会いできません、と突っぱねる。


後日桓玄が、

そのことを殷仲堪に漏らした。


昼寝なんぞで俺のこと袖にするたぁ

いい度胸じゃねえか、とか、

そんな感じだろうか。その意図は、

さすがにちょっと読み取り切れない。


すると殷仲堪は言う。


「初めから眠ってはおらんかったぞ。

 だいたい、きみが来たと知っておれば、

 それこそ論語の賢賢易色だ。


 賢人と会う喜びは、

 色ごとの喜びにも劣りはせん」




桓玄詣殷荊州,殷在妾房晝眠,左右辭不之通。桓後言及此事,殷云:「初不眠,縱有此,豈不以『賢賢易色』也。」


桓玄の殷荊州を詣でるに、殷は妾の房に在て晝に眠り、左右は辭して之を通さず。桓は後に此の事に及びて言わば、殷は云えらく:「初にも眠らず、縱いて此く有り、豈に以て賢を賢とし色に易えんとせざるや?」と。


(言語103)



論語学而第一。

賢賢易色、事父母能竭其力、事君能致其身、與朋友交言而有信、雖曰未學、吾必謂之學矣。

賢人を尊び慕って好色の心に替え、父母に仕えてはあらん限りの力を尽くし、君に仕えては一身を捧げ、朋友と交わって言葉に偽りがなければ、他人がまだ学問した者ではないといっても、私はこの人をすでに学問した人だと言う。


殷仲堪に対して当て込んでみれば「色ごとなんぞより賢人に会え」だし、つうかもう手下への責任転嫁が甚だしくて、お前さぁ……という感じになってくる。要は殷仲堪さんの指示の徹底不足ですよね?

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