蘇峻2  呉は燃えているか

蘇峻そしゅんしん軍の将として

活躍していた頃の話だ。


王敦おうとんの配下、沈充しんじゅうのエリアに逃亡。

蘇峻、沈充を追討するため出兵した。

この時、陸邁りくまいという人を側近に迎えた。


そして呉に至り、

沈充と戦おうとするときに、

密かに部下に命じる。

示威行為として、周辺を焼き払え、と。


蘇峻の意図を知った陸邁、

驚き、蘇峻に言う。


「呉の治安が未だ安定しないところで

 辺り一帯を焼き払ってごらんなさい。

 たちまち地元住民たちが

 反乱を起こすでしょう。


 それでも焼き払われると

 いうのであれば、仕方ありません。

 ここはわたくしの地元。


 まずはわたくしの家を

 焼き払う事です」


ふざけんな、断乎として抵抗すんぞ、

やりてえなら俺を殺してからにしろ、

というわけである。


陸邁に言われてしまえば、

どうしようもない。


蘇峻も、放火は諦めるのだった。 




蘇峻東征沈充,請吏部郎陸邁與俱。將至吳,密敕左右,令入閶門放火以示威。陸知其意,謂峻曰:「吳治平未久,必將有亂。若為亂階,請從我家始。」峻遂止。


蘇峻の東に沈充を征せるに、請うて吏部郎の陸邁を俱とす。將に吳に至らんとせば、左右に密かに敕し、閶門に入りて火を放ち以て威を示さしめんとす。陸は其の意を知り、峻に謂いて曰く:「吳の治平さるは未だ久しからず、必ずや將に亂有らん。若し亂階を為すらば、請う、我が家より始むるべし」と。峻は遂に止む。


(規箴16)




沈充

王敦の配下のうち、武の総取締役くらいの人。けれども蘇峻にコテンパンにされて、最終的には部下によって首を斬られた。ちなみにこの人は反乱者なのだが、息子とか孫とかが晋の為に身を粉にして働いてるのがめっちゃ熱いんすよ。


陸邁

呉郡陸氏、要するに陸遜りくそんの一族。ここにしか登場しないから来歴はよくわからないのだが、蘇峻に対して一歩も引かないところを見ると、やはり一本筋の通った名士だったのだろう。

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