王羲之6 死者を批判す  

王羲之おうぎしは、王脩おうしゅう許詢きょじゅんと仲が良かった。


が、二人の死後、

二人についての批判を

厳しくくわえるようになった。


これを聞いた孔巌こうげん、王羲之に言う。


「王羲之様は、王許のお二方と

 とても親しくなさっておられました。


 そのようなお二方が亡くなった後に

 悼むこともなく

 こき下ろされるような振る舞いは、

 貴方様に統べられる者としては、

 とても感心できません」


この頃の王羲之は会稽かいけいの長官で、

孔巌は会稽の住人。

なので、そう言ったのだ。


王羲之、孔巌に諭され、

大いに恥じ入るのだった。




王右軍與王敬仁、許玄度並善。二人亡後,右軍為論議更克。孔巖誡之曰:「明府昔與王、許周旋有情,及逝沒之後,無慎終之好,民所不取。」右軍甚愧。


王右軍と王敬仁、許玄度は並べて善し。二人の亡きたる後、右軍の議を論ぜるところ更ごもに克せるを為す。孔巖は之を誡めて曰く:「明府の昔に王、許と周旋し情を有せるに、逝沒の後に及びたるに、慎終の好無きたるは、民の取らざる所なり」と。右軍は甚だ愧づ。


(規箴20)




王羲之がやり込められる、珍しいエピソード。と言っても機知でのやり合いではありませんが。


ただ、どう言ったことを王羲之は批判したんでしょうね。どちらも卓越した文人ではあったが、その人品には、多少なりともアレなところがあったのかしら。


ちなみに王脩は王濛おうもうの息子、王恭おうきょうの叔父です。

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