殷浩11 さすがの劉惔
清談に優れた人たちたちが、
みな
ただ、
殷浩さんと孫盛、
この世に見える現象は表象に過ぎす、
その本当の意味を探るためには、
易に当たらねばならない、
と言った感じの論だ。
特に、孫盛が熱く語った。その意気は、
雲をもつかんばかりの勢い。
まぁ殷浩さんと一緒ってことはね。
「俺のほうが上手く説明できるぜ」
って、張り切ってたんでしょう。
が。
……えー?
その論、おかしない?
皆を納得させるには至らない。
とは言え、うまく反論はできなかった。
そこで簡文さまが嘆息。
「劉惔ならば、孫盛の論を
上手くねじ伏せるのだろうがなあ」
と言う訳で、劉惔が呼ばれる。
えっうそマジ?
アレに来られたらやばない?
孫盛も一瞬にして悟ったようだ。
奴なら論破してくるだろう、と。
そして劉惔がやってきた。
話を聞くと、孫盛に概略を語らせる。
語りながら孫盛、確信してた。
あっこれ、ダメな奴だいろいろ。
そして口火を切る劉惔。
約二百語ほどの簡素な論。
だがそれだけで、孫盛論はズタボロに。
ウッヒョー! マジかよ劉惔!
みんな手を叩いて、大爆笑の大喝采。
さすが劉惔だぜ!
皆が劉惔をたたえたそーな。
殷中軍、孫安國、王、謝能言諸賢,悉在會稽王許。殷與孫共論易象妙於見形。孫語道合,意氣干雲。一坐咸不安孫理,而辭不能屈。會稽王慨然歎曰:「使真長來,故應有以制彼。」既迎真長,孫意己不如。真長既至,先令孫自敘本理。孫麤說己語,亦覺殊不及向。劉便作二百許語,辭難簡切,孫理遂屈。一坐同時拊掌而笑,稱美良久。
殷中軍、孫安國、王、謝の言を能くせる諸賢、悉く會稽王が許に在す。殷と孫は共に易象の見形に妙せるを論ず。孫は道の合なるを語らば、意氣は雲を干かんとす。一坐は咸な孫が理に安んぜざるも、辭にては屈さる能わず。會稽王は慨然として歎じて曰く:「真長をして來たらしまば、故より應えて以て彼を制せる有らん」と。既に真長を迎えたらば、孫は己の如かざるを意ゆ。真長の既に至れるに、先に孫をして自ら本の理を敘せしむ。孫は麤にして己が語を說き、亦た殊に向に及ばざるを覺ゆ。劉は便ち二百許りの語を作し、難せるに辭は簡にして切、孫が理は遂にして屈す。一坐は時を同じうして掌を拊して笑い、美良なるの久しきを稱う。
(文學56)
簡文さまの時に没にしたんだけど、殷浩と孫盛のバトルのあとに読むと、かなり面白くなってきた。
っつーか殷浩さんの引き際の上手さが異常。孫盛バーサス劉惔に全然かかわろうとしてねえ。お前爆笑してたろ一緒に。
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