周顗3  私は柱     

周顗しゅうぎさんが東晋の柱として

辣腕を振るい始めた頃のことだ。


ある宴席で、顧栄こえいの息子、顧顕こけんと同席した。


顧顕、周顗さんに酒杯を進める。

だが周顗さん、そいつを受けない。


すると顧顕、今度は柱のほうに向かった。

しかも、柱に向けて酒を勧める。


「なぁ、柱よ。

 家を支える立場ってのは、

 ああ己惚れていて

 大丈夫なものなのかね?」


そのチクリとした一刺し、

周顗さんのツボにはまった。


こいつは面白い奴だぞ、と、

以降周顗さんと顧顕、

仲良しになったそうな。




顧孟著嘗以酒勸周伯仁,伯仁不受。顧因移勸柱,而語柱曰:「詎可便作棟梁自遇。」周得之欣然,遂為衿契。


顧孟著の嘗て酒を以て周伯仁に勸めるに、伯仁は受けず。顧は因りて移りて柱に勸め、柱に語りて曰く:「詎んぞ便ち棟梁に作し、自ら遇さるべきや?」と。周は之を得て欣然とし、遂には衿契を為す。


(方正29)




顧顕

若死にしてしまったため、まるで事跡が残っていない。ついつい現代の感覚で考えちゃうけど、この時代の夭折率って今とは比べ物にならなかったんですよねぇ……しかし周顗さんのこの傲慢さ。おさすがである。

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