周顗2  周顗ぶっ倒れる 

周顗しゅうぎさん、人事部の幹部になった。


人事部で夜遅くまでお仕事をしていると、

周顗さん、不意の病におそわれ、

危篤状態にまで陥った。


それを聞いた、刁協ちょうきょうさん。

当時の皇帝付き秘書長官。


かれは周顗さんのピンチに駆けつけると、

全力で介助介抱に当たった。

そのお陰もあり、周顗さん、

何とか一命をとりとめる。


さて翌朝、知らせを聞いた弟の周崇しゅうすう

慌てて周顗さんの元に駆けつける。


周顗さんが寝かされている

部屋に入ってみれば、そこでは

刁協が布団の横で大泣きしていた。


周崇が来たことに気付くと、

刁協、昨晩の周顗さんが

どれだけヤバかったかを

滔々と語る。


すると周崇、刁協さんをぶん殴った!

なんで!


ひいい、と刁協さん、

扉のほうにまで退避する。


そして周崇は、アニキの前に行くと、

病状のことなんぞろくすっぽ聞かず、

こんな言葉を投げかけるのだ。


「兄貴! アンタ洛陽らくようにあった頃には

 あの和嶠わきょうと引き比べられてた方だ!


 だってのに、なんで刁協みたいな

 媚びへつらってくる奴の

 世話になんぞなってる!」


言うなり、とっとと退出。


いやあの、周崇サン……

ご存じかと思いますが刁協さん、

あなたの兄上より偉いですよ……




周伯仁為吏部尚書,在省內夜疾危急。時刁玄亮為尚書令,營救備親好之至。良久小損。明旦,報仲智,仲智狼狽來。始入戶,刁下床對之大泣,說伯仁昨危急之狀。仲智手批之,刁為辟易於戶側。既前,都不問病,直云:「君在中朝,與和長輿齊名,那與佞人刁協有情?」逕便出。


周伯仁の吏部尚書と為れるに、省内に在りて夜に疾めるに危急たり。時に刁玄亮は尚書令為れば、救う備えを營みて親好の至りとす。良や久しうして小しく損ず。明くる旦、仲智に報さば、仲智は狼狽し來たる。始め戶に入れるに、刁は床に下りて之に對し大いに泣き、伯仁の昨の危急の狀を說く。仲智は手ずから之を批し、刁は戶側にて辟易を為す。既に前み、都べて病を問わず、直だ云えらく:「君の中朝に在りて和長輿と名を齊しうせるに、那んぞ佞人の刁協と情を與せんか?」と。逕ちに便ち出づ。


(方正27)




刁協

元帝3

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885462181

で、まさしく周崇の言う「媚び諂ってくる奴」の典型として振る舞ってる。そう言う所を踏まえれば、まぁ周崇の言い分に一分の理は見出せなくもない、……んだけどさぁ、周崇お前さぁ、アニキの危篤のピンチを救ってくれた人に対してそれはどうよ?


いや「方正」です、己の筋を貫いた人、って意味では、媚び諂ってくるよーな奴に貸しを作るとかふざけんなよクソ兄貴、になるのはわかります。けどさぁ、さすがに「悌」の問題に絡んでこないこれ? 他ならぬ兄貴自身の命を損なうタイミングだったわけだしさぁ。


和嶠

誰が覚えてんだって感じの方だから書いておきます。武帝司馬炎しばえんの側近。自分にも他人にもめっちゃ厳しい人で、謝安しゃあんさまも周顗さんと和嶠を「切り立った岩壁のような人物」と同一カテゴリに当てはめています。なお「名をひとしく」とは言われてるけど、世代は二つくらい違います。

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