劉琨3  人士を招けど  

劉琨りゅうこんは人士を集める手段に長けていた。

のだが、彼らを

慰撫する能力はからきしだった。


一日に数千人というレベルで

ひとが集まっても、

同じくらいの数の人間が流出する。


このような有様であったから、

結局功績らしい功績も上げられずに

敗亡してしまったのである。




劉琨善能招延,而拙於撫御。一日雖有數千人歸投,其逃散而去亦復如此。所以卒無所建。


劉琨は善く招延せる能うも、撫御にては拙し。一日に數千人の歸投を有せると雖ど、其の逃散し去れるも亦た復た此くの如し。卒に建つる所無かる所以なり。


(尤悔4)




この条については注でのツッコミが入っている。「いやいやそんなレベルでひとを失いまくってたら十年も戦ってなどいられんでしょうよ」とのことなのだが、石勒を前にして手を取り合うべき王浚おうしゅんと仲違いやらかしちゃう人だからなあ。つうても王浚は王浚で諸鮮卑せんぴの力さえあれば独立できるって考えでいただろうから、そんな簡単でもないか。いずれにせよさんざ「すげえ人」って書いときながら結局最後でこうやって突き落とす世説新語さんの「将軍」に対する冷淡さは、構造的な意味でギャグとすら言ってもよい気がする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る