庾亮11 庾亮さまの人品 

庾亮ゆりょうさまは実に堂々とした振る舞いで、

軽々しさのかけらもなかった。

のだが人びと、

これをポーズだと思っていた。


そんな庾亮さまには数歳になる長男、

庾会ゆかいがいる。

この子がまたパパそっくりな振る舞い。


「あっ、じゃあ庾亮さまの振る舞いも、

 あれが地なんだ?」


と、みなが受け入れた。


ある日温嶠おんきょうさん、カーテンに隠れて

庾会を驚かせてみた。

すると庾会、少しも驚かず、

おもむろに膝まづき、言う。


「温嶠様ともあろうお方が、

 何故このようないたずらを

 なさったのです?」


これはパパに勝るとも劣らんぞと、

いろいろな人が語るようになった。


のだが、そんな庾会、

蘇峻そしゅんの乱のときに殺される。


ある人は言う。


「会くんを見れば、

 庾亮殿のあの振る舞いも

 ポーズでも何でもないのだ、

 とわかるな」




庾太尉風儀偉長,不輕舉止,時人皆以為假。亮有大兒數歲,雅重之質,便自如此,人知是天性。溫太真嘗隱幔怛之,此兒神色恬然,乃徐跪曰:「君侯何以為此?」論者謂不減亮。蘇峻時遇害。或云:「見阿恭,知元規非假。」


庾太尉が風儀は偉長にして、舉止は輕からざるも、時の人は皆な以て假と為す。亮に數歲なる大兒有り、雅重の質、便ち自ら此くの如きたれば、人は是れを天性と知る。溫太真は嘗て幔に隱れて之を怛かすも、此の兒の神色は恬然にして、乃ち徐ろに跪きて曰く:「君侯は何をか以て此を為せるや?」と。論者は亮に減さずと謂う。蘇峻の時に害さるに遇う。或るひと云えらく:「阿恭を見るに、元規の假に非ざるを知る」と。


(雅量17)




庾会

十九歳で殺されてる。まぁ例によって夭折した才人は age てくアレだろう。死者については何とでも言えますからねー。ただ、やっぱり後世人は「生き残った奴が凄い奴だ」という事は認識しつつも「すごいけど名前が残ってない人だっていくらでもいる」と肝に銘じておくべきなのだろうね。

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