庾亮7 諱を犯す
揚都賦。
「どっかで見たことある表現ばっかで、
あんまり新奇性は感じられないな」と
切って捨てたアレだ。
ここで庾闡、
「温嶠どのは大義の道しるべ、
庾亮どのは民衆の仰ぎ見る所。
声望は銅鑼の音のように響き渡り、
徳望のまばゆきは玉の輝きに似る」
と語っていた。
さて庾亮さま、賦ができたと聞き、
早速読ませてほしい、とねだる。
そして合わせて、贈り物を届けてきた。
庾闡さん、あっやべ、と気付いた。
賦の中に「亮」を使ってしまっている。
まさかこんなところで
諱犯しちゃうとかマジかよ、
慌てて「亮」を「潤」に書き換える。
さてそうすると今度は「望」がおかしい。
韻が踏めなくなってしまう。
そこで「望」の字も「俊」に
書き換えるのだった。
庾闡始作揚都賦,道溫、庾云:「溫挺義之標,庾作民之望。方響則金聲,比德則玉亮。」庾公聞賦成,求看,兼贈貺之。闡更改「望」為「俊」,以「亮」為「潤」云。
庾闡の始め揚都賦を作せるに、溫、庾に道いて云えらく:「溫は義の標を挺べ、庾は民の望を作す。方さに響かるるは則ち金聲、比の德は則ち玉亮」と。庾公は賦の成るるを聞き、看んことを求め、兼ねて之に貺いを贈る。闡は更に「望」を改め「俊」と為し、「亮」を以て「潤」に云うを為す。
(文學77)
いや書いた時に気付けよ。
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