謝安49 俊才は謝氏に在り

王凝之おうぎょうしの元に嫁いだ、

謝安しゃあんさまの姪、謝道韞しゃどううん

だが、夫のことを

思いっきり軽んじていた。


ある日謝家に里帰りすると、

もうあからさまに不機嫌である。


その様子を見て、謝安さま、

慰めるつもりで声を掛けた。


「王くんは、あの王羲之おうぎし様の息子だ。

 その素質だって悪くはあるまい。

 何をそう恨めしくしているのだ?」


すると謝道韞、きっと答える。


「素質ですって?

 そうしたら我が家門には

 謝万しゃまん様が、謝尚しゃしょう様がおります。


 それに謝韶しゃしょう謝朗しゃろう謝玄しゃげん謝淵しゃえん

 みな優れておりますわ。


 ああもう、まさかこの世に、

 王さまのように

 愚鈍な方がいらっしゃるなんて!」




王凝之謝夫人既往王氏,大薄凝之。既還謝家,意大不說。太傅慰釋之曰:「王郎,逸少之子,人材亦不惡,汝何以恨乃爾?」答曰:「一門叔父,則有阿大、中郎。群從兄弟,則有封、胡、遏、末。不意天壤之中,乃有王郎!」


王凝之が夫人の謝は既にして王氏に往きたれど、大いに凝之を薄らぐ。既に謝家に還らば、意は大いに說ばしからず。太傅は之を慰釋して曰く:「王郎、逸少の子なれば、人材は亦た惡しからさらん。汝は何をか以て乃ち爾れを恨みたるか?」と。答えて曰く:「一門に叔父、則ち阿大、中郎有り。群從せる兄弟、則ち封、胡、遏、末有り。意わざりき、天壤の中に、乃ち王郎有りたるを!」と。


(賢媛26)




「我が夫」と言わない道韞さんマジ怖ええ。


箋疏見ると原文に上がってる字たちのどれが誰かって比定に血道を上げていたが、その中に一生懸命謝琰しゃえんを推そうとしている人がいて笑った。そうだよね、謝安さまの嫡男だもんね……俊英に混ぜたいよね……


でもなお兄さん、どう頑張っても無理筋やぜ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る