謝安44 少司命
入不言兮出不辭
乘回風兮載雲旗
死にゆく者のいる部屋に、
かれは言葉もなしで入ってくる。
そして立ち去る言葉もなしに、
死にゆく者と共に去る。
かれは巡り巡る風に乗り、
たなびく雲の上に載って、
去りゆくのだ。
天空の皇居、
星座の一つをテーマに歌われたものだ。
後日王胡之は、
その詩を歌った時のことを、
このように話している。
「あれを吟じていた時は、
まるでこの世に我一人のみが
居るようであった」
王司州在謝公坐,詠「入不言兮出不辭,乘回風兮載雲旗」。語人云:「當爾時,覺一坐無人。」
王司州は謝公の坐に在りて詠えらく「入りては言せず、出でては辭せず、回風に乘りては雲旗に載る」と。人に語りて云えらく:「當に爾の時、一坐に人無きを覺ゆ」と。
(豪爽12)
少司命と言う詩は、熱烈なラブソングのようにも見える。
悲莫悲兮生別離 樂莫樂兮新相知
悲しきは生別離より悲しきはなく、
楽しきは新相知より楽しきはなし。
なんて句も見えたり。まー、かなりうっとり歌ったんだろうね、このオッサン。
謝安さまの評価を伺いたいところですが、豪爽にあること考えれば、絶賛だったんでしょう。
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