謝安36 謝安の支遁評
この辺りを、
話していたことがある。
「支遁殿の眼差しは、深く黒々としている」
「その聡明さがありありと
にじみ出ておりますな」
さてそんな支遁を、謝安さまは
どのように評価なさっていたのだろう。
「支遁殿と
論談に優れているだろうか」
謝安さまが答える。
「ぎりぎりで嵆康かな。
相当に踏ん張らねばならなさそうだが」
再び郗超が問う。
「では、
「高邁である点にかけては、
支遁殿が圧倒的であろう。
ただ論談、と言う意味では、
殷浩様のほうが粘り強く論を展開、
支遁殿を制するだろう」
「支遁様と
どちらが優れておりましょうか?」
すると謝安さまの返答はつれない。
「先人たちがそのようなことを
気にしたことはないよ。
庾亮様と較べてしまっては、
支遁殿はどうしても霞んでしまう」
「支遁様と
どちらが優れておりましたか?」
謝安さまは答える。
「王羲之様が上だ。とは言え、
謝公云:「見林公雙眼,黯黯明黑。」孫興公見林公:「稜稜露其爽。」
謝公は云えらく:「林公の雙眼を見るに、黯黯として明らかなる黑たり」と。孫興公は林公に見したるらく:「稜稜として其の爽なるは露る」と。
(容止37)
郗嘉賓問謝太傅曰:「林公談何如嵇公?」謝云:「嵇公勤著腳,裁可得去耳。」又問:「殷何如支?」謝曰:「正爾有超拔,支乃過殷。然亹亹論辯,恐殷欲制支。」
郗嘉賓は謝太傅に問うて曰く:「林公の談は嵇公をして何如?」と。謝は云えらく:「嵇公は腳を勤著し、裁かに去るを得るべきのみ」と。又た問うらく:「殷と支とでは何如?」と。謝は曰く:「正にして爾れ超拔せる有り、支は乃ち殷に過ぐ。然して亹亹たる論辯、恐るらくは殷は支を制せんと欲す」と。
(品藻67)
王子敬問謝公:「林公何如庾公?」謝殊不受,答曰:「先輩初無論,庾公自足沒林公。」
王子敬は謝公に問うらく:「林公は庾公とでは何如?」と。謝は殊に受けず、答えて曰く:「先なる輩は初にして論無し、庾公は自ら林公を沒せるに足る」と。
(品藻70)
王孝伯問謝公:「林公何如右軍?」謝曰:「右軍勝林公,林公在司州前亦貴徹。」
王孝伯は謝公に問うらく:「林公は右軍とでは何如?」と。謝は曰く:「右軍は林公に勝れる。林公は司州が前に在りて亦た貴きを徹す」と。
(品藻85)
おぉう……林公のこのヤムチャ感……
そして王胡之のこのとばっちり感……
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