謝安30 言わぬが花   

謝朗しゃろうが史書の編集に携わることになった。

そこで著述をするよう命じられたのが、

西晋せいしん期の名臣にして

石勒せきろくに殺害された謹直のひと、王堪おうかんについて。


だが謝朗、この人のことをよく知らない。

なので謝安さまに、

この人について教えてください、と乞う。


以下は、謝安さまのコメントである。


「まぁ、すごい人だよ。

 王烈おうれつの息子で、


 従兄には藩岳はんがく

 この人は優れた文人として有名だな。

 王烈の妹、その息子に当たる。

 だから、あの藩岳の詩にも

 詠まれている。

  あなたの母はわが姑、

  私の父はあなたの舅。

 と。


 言ってみれば、お互いを

 配偶者であるかのように

 見なし合っていたのだ。


 また王堪の妻は、

 姉が阮瞻げんせんに嫁いでいる。

 阮瞻と言えば若き王導おうどう様と共に

 一世を風靡していた方だ。


 さらに言えばこの姉妹、

 かの許允きょいんの娘でもある」




謝胡兒作著作郎,嘗作王堪傳。不諳堪是何似人,咨謝公。謝公答曰:「世冑亦被遇。堪,烈之子,阮千里姨兄弟,潘安仁中外。安仁詩所謂『子親伊姑,我父唯舅』。是許允婿。」


謝胡兒は著作郎に作され、嘗て王堪傳を作す。堪の是れ何に似たる人かを諳んじずば、謝公に咨る。謝公は答えて曰く:「世冑は亦た遇さる。堪は烈の子にして,阮千里が姨兄弟、潘安仁が中外なり。安仁の詩にては所謂『子が親は伊れ姑、我が父は唯れ舅』と。是れ許允が婿なり」と。


(賞譽139)




王堪

ええと謝安さま、王堪本人の人品につきましては……? まぁ、追贈で太尉をもらってる以上、ひとかどの人とは思いますが。

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