黄昏時の宰相 謝安

謝安1  兄の膝上で   

文靖公 謝安しゃあん 全67編

既出:陸遜、武帝5、廃帝3、簡文14

   簡文16、簡文25、簡文26

   簡文△4、孝武1、苻堅3、桓温15

   桓温18、桓温19、桓温20

   桓温27、桓温28、桓温30

   桓温32、桓温33、桓温33

   桓温48、桓温52、桓温53



謝奕しゃえきは、はじめえん県の長の座に就いた。

(※晋の行政区分は州→郡→県→里)。


そこで一人の老人が軽微な罪を犯した。

かれに対する謝奕のお裁きは

「酒を飲め」というものだった。


強引に酒を飲まされ、

べろんべろんになる老人。

それでも酒は飲まされ続ける。


この時謝安さま、七、八歳ころ。

青い袴を穿き、謝奕の膝の上で、

この執行の様子を見ていた。


老人の様子を見てこらえきれず、

謝安さまは言う。


「兄ちゃん、おじいさんが可哀想だよ。

 何でここまでしなきゃいけないの?」


それを聞くと謝奕、はっと我に返る。


「そうか、お前は彼をいいかげん

 許してやれ、って言うんだな」


謝奕、謝安さまの言葉に応じ、

老人を解放してやるのだった。




謝奕作剡令。有一老翁、犯法。謝以醇酒罰之。乃至過醉、而猶未已。太傅時年七八歲、箸青布絝、在兄膝邊坐。諫曰:「阿兄、老翁可念。何可作此?奕於是改容曰:「阿奴欲放去邪?」遂遣之。


謝奕は剡令を作さる。一なる老翁の法を犯さる有り、謝は醇酒を以て之を罰す。乃ち醉いたること過ぐるに至れど、猶お未だ已まず。太傅は時に年七八歲、青き布絝を箸けて兄の膝邊が坐に在り。諫じて曰く「阿兄は老翁を念う可し。何ぞ此を作さるべきか?」と。奕は是に於いて容を改めて曰く「阿奴は放去せしむるを欲せんや?」と。遂には之を遣わす。


(德行33)




この記述をまるまる信じれば、謝奕と謝安の年齢差は、最低で十三才、ということになりますね。

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