桓温49 マイペースな羅友

羅友らゆう荊州府けいしゅうふの役人としての

職務に携わっていた。

要するに、それほど高官ではない。


さて、桓温かんおんさまが

荊州府から離れる王洽おうこうの為に、

離別の宴を開いた。


ここで羅友、顕官でないにもかかわらず

ガンガン前に出てくる。

だが、しばしすると、

さくっと立ち去ってしまった。


不思議に思ったのは桓温さまである。


「羅友、王洽に何か聞きたいことが

 あったんじゃないのか?

 なのに、なんでろくろく話もせずに

 席を離れたんだ」


すると羅友、しれっと答える。


「前の席に出てた料理が

 食べたかったんです。

 白羊の肉がうまいと

 聞いていたのですが、

 そんなもの、口にする機会も

 ありませんでした。

 だから、頑張って

 前のほうに出て、頂きました。


 特に王洽様に

 聞きたいこともないですし、

 食べて満足したので、

 もう用もなくなりました。

 ですので、立ち去りました」


お、おう……。




羅友作荊州從事。桓宣武為王車騎集別。友進坐、良久辭出。宣武曰:「卿向欲咨事、何以便去?」答曰:「友聞、白羊肉美、一生未曾得喫。故冒求前耳。無事可咨。今已飽、不復須駐。」了無慚色。


羅友は荊州從事に作さる。桓宣武は王車騎が為に集まり別る。友は進みて坐し、良や久しうして辭して出づ。宣武は曰く「卿は向に事を咨らんと欲せるに、何をか以て便ち去さんか?」と。答えて曰く「友は白羊の肉の美なるを聞けど、一の生にて未だ曾て喫うを得ず。故に前を求むを冒したるのみ。咨るべき事無し。今は已にして飽いたれば、復た駐むをすべからざるなり」と。了には慚づる色無し。


(任誕44)




王車騎

劉孝標りゅうこうひょうは王洽を指していると言うが、どうにも違う人くさい。王導ジュニアたちのうち、車騎將軍の追贈がはっきりしているのは王劭おうしょうである。まぁ、「追贈の記述がない」と「追贈されていない」は全く別もんだし、変に断言も出来ませんけれども。

つーかそこばっかり気になっちゃったよ。羅友のこのウツケモンっぷり、それはそれでめっちゃ面白いのにね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る